政治倫理審査会に岸田首相が出席:国民の政治不信と政治混乱はなお続く
岸田首相が政治倫理審査会に出席する異例の事態
2月29日の午後2時から、岸田首相が自民党派閥の政治資金問題を巡って開かれた政治倫理審査会に出席し、弁明及び答弁を行った。 本来は、旧安倍派、旧二階派の5名の衆議院議員が出席を予定していたが、公開方式を巡って野党と自民党との間の調整がつかず、一時は5名すべてが出席を見合わせる事態となった。 そこで、岸田首相は自民党総裁として自ら出席することで、5名すべての出席を促す異例の事態となったのである。野党は政治倫理審査会の開催を、予算審議を進める条件としていた。岸田首相は、政治倫理審査会で疑惑を持たれている議員が自ら説明責任を果たすことで、国民の政治不信を和らげ、政権浮揚につなげる考えである。それとともに、3月2日までに2024年度予算案を衆議院で可決させ、年度内成立を確実にすることを狙って、政治倫理審査会への出席を決めた。
党のガバナンス欠如と首相の指導力不足が指摘される
しかし審査会では、議員の出席を巡って混乱が生じたことを受け、党のガバナンスの欠如や岸田首相の指導力不足を問う意見が野党から出された。立憲民主党の野田元首相は、岸田首相の同審議会出席に強烈な違和感があるとし、自民党内での駆け引きから迷走が生じて今回の混乱を招いたとして、自民党のガバナンスの欠如を指摘した。 岸田首相は、審査会の出席については本人の意思が尊重されることが規約に明記されていることから、出席を強いることはできなかったとの主旨の発言をしたが、岸田首相自らが出席するという異例の事態に追い込まれた背景には、自民党の党としての統一感やガバナンスの低下、首相の指導力低下があると言えるだろう。 政治資金問題を巡る今後の再発防止の対応について、岸田首相は、党の規約を見直した後に、政治資金規正法の改正を行う、という2段階で進める考えを示した。そして、法改正については、1)不適切な会計処理では政治家本人の責任を問う、2)外部監査の目を会計に導入する、3)政治資金の透明化、の3つの方向性を示した。そうした方針自体については、野党から目立った批判はなかった。