国土交通省による「上下水道」一元管理スタート、災害対策・水道管老朽化対策におけるメリットは? 専門家が解説
◆老朽化する水道管 今のペースだと更新に100年以上かかる?
吉田:水道管の「老朽化」の現状は、どうなっているのでしょうか? 塚越:上水道は急速に普及したため、課題がたくさんあります。厚労省によれば、2020年度の段階で法定耐用年数の40年を超えた上水管の割合は「20.6%」。また、全国の主要な水道管の耐震適合率(耐震化率)について、2022年度末時点の全国平均は42.3%で、前年から1.1ポイントしか上昇しておらず、補強が進んでいないことが見て取れます。 全国平均で42.3%ということですが、都市と地方では格差がありますし、さらにこれは主要な水道管の割合なので、全体で見るとちょっと厳しい状況です。 では水道管の維持は誰がしているのかというと、上水道業務は主に市町村などが、独立採算制の公営企業として運営しており、基本的に税金ではなく私たちの水道利用料でやりくりしています。ただ、その事業者は全国に1,300ほどあるものの、電気やガスに比べて規模も小さく、職員も少ないです。 災害が生じると結構大変で、例えば能登半島地震でも上下水道の管路の破損によって、一時は断水が最大13万戸超におよんだということです。昨今は設備の老朽化で、年間2万件を超える水漏れや破損事故が生じており、大規模な災害が発生すると長期の断水も多くなります。 さらに人口減少や節水家電の普及で水道収入は低下しており、基本的に水道収入で人件費や維持費を賄っているため、財源不足で老朽化対策がなかなか進まないということです。 さらに、水道管の更新には1kmあたり1億~2億円かかるとのことで、現在のペースだとすべてを更新するのに140年かかると言われていますが、その間に全部が老朽化してしまいます。今回の管理移管によって、関係者からは国交省から災害対策などの名目で資金が増え、整備が進むのではという期待の声もあるということです。
◆国土交通省による一元管理のメリット
ユージ:国土交通省が管理することで、水道管の老朽化対策は進むと思いますか? 塚越:そうですね。移管の理由の1つに、一元的に支援ができることが挙げられています。もともと国交省は道路や河川の管理もしているので、インフラ整備のノウハウが活かせるということです。ネットワークのある国交省が市町村支援を円滑におこなえると考えられます。 また災害に対しても、国交省への移管によって通称「災害負担法」(公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法)という法律に水道事業が追加されます。この法律は災害復旧費用に対する国の補助に関するもので、従来が2分の1ところ、法律が適応されると基本的に補助が3分の2になります。つまり災害があったときに国からの補助が増えます。