【プロレスは演出か?】70歳超えの現役プロレスラー藤波辰爾にロングインタビュー。プロレスのすべてを吐露
■「プロレスは不思議な格闘技」藤波辰爾のプロレス観
Q「1984年旗揚げのUWFや、その後新日本プロレスからも色んな流派が出てくる。そういう団体と思想的な部分でぶつかったかと思うが、プロレス観に変化はありましたか?」 僕はもうプロレス一色ですね。だからプロレスイコール格闘技。今でこそ、格闘技もいろいろなジャンルに分かれていますけど、僕らの頃はもう一緒くたに格闘技イコールプロレスということで、プロレスがその中のひとつの頂点にいる感じでずっと来てましたんで。だから僕はリングに上がると、気持ち的には相手が蹴ってくれば当然それに対応しなきゃいけないとか、関節技でくれば、それに対応する。でも、暗黙の急所は絶対どこかで外しているとか。本来はそんな必要はないんだろうけど。でもそれはもう自分たちは長い巡業っていうか、地方遠征で何試合もあるから、その中で要するに首を絞めても相手を落とすところまでは行かないとか。そういうのが別に決まっているわけじゃないんだけど、それはもう、お互いの競技者同士でそういうルールがちょっとあったんですよね。もちろんそれを裁くレフェリーはいるんだけど。 Q「信頼しながら傷つけあうみたいな・・・不思議な競技ですね?」 だからプロレスというのは本当に不思議な格闘技ですよね。 ただ・・・でも本当に名勝負、例えば本当にいい試合とか格闘的な色々なものを含めて、本当に名勝負っていうのはやっぱりどこか信頼感がないとできないでしょうね
■猪木さんのマッチメイクの妙「仲の悪さから生まれた“長州力VS藤波”宿命の対決」
Q「藤波さんがよく言われている名勝負。長州さんとの名勝負とかあのような時期は信頼できていたんですか?」 信頼が生まれますね。最初は信頼感なんてない。あいつ憎しで、口利くのもイヤだとか、そういう風に戦ったものが、だんだん試合がかみ合っていく中で、お互いが、もちろんベースは向こうの方が上だからね。(レスリングでオリンピック出場の)長州の方は全日本のトップを走ってきているし、僕は全く格闘技経験もないところから入っているから。プロレスの中では僕の方が先輩ではあるんだけど、やはり年が下で、格闘技の経験もない、ただファンのウケがいい。彼自身はあれだけベースにしっかりしたものを持っていて、肩書があってプロレス界に来た中で、やはり自分がプロレスというリングに上がってくると勝手が違うんでしょうね。それで、彼自身がイライラも当然あったでしょうし。だんだんだんだん試合をしていく中で、それが表沙汰になって。 試合の当事者の僕と長州がリングでにらみ合って、組み合ってやってんだけど、会場の中のお客さんがあちこちで長州派と藤波派で、ケンカが始まってましたもんね Q「そういう競技ってないですよね?」 ないですよね。だから本当にプロレスは不思議な現象が起きるというのか、力を持ってますね・・・。 だから、特に新日本プロレスはそういう何か不思議な団体で、猪木さんと坂口さんなんかがプロレスのマッチメイクを組む方なので、新日本プロレスの現場で起きる仲間割れや、仲が悪そうだなっていうのを見ているんだね。だから、ちょうど僕と長州なんか、そう言うどこかでギクシャクしたものが、ああいうマッチメイクとなって長年の長州と僕の抗争になっちゃうんだね。 Q「生の感情が全部伝わる・・・?」 ファンの方に伝わるのが早いんでしょうね。だから、「いつかこういう戦いを作っていく」のではなくて、そういう突発的にマッチメイクされていく。また当時は生中継だから、流れたものが一夜にて広がっちゃうから。だから、どこへ行っても、だんだんだんだんそれが今度はもうメーンのカードになっていく。
■プロレスは“闘い”なのか、“表現”なのか、“競技”なのか、“ショー”なのか
Q「藤波さんにとってプロレスっていうのはいろんな捉え方ができると思うんですけど、闘いなのか表現なのか競技なのかショーなのか。藤波さんにとってはどんな位置付けですか?」 闘いですね。いろいろな意味があるでしょうけどね。猪木さん自身がよく言われていた「リングが闘いなんだよ」って。だからもちろん猪木さん自身の闘いは一点だったんでしょうけど、僕の場合はいろいろな部分で、生きていく上でのいろいろなモノの闘いですね。 うーん、何だろう。これもまた大雑把な言い方だけど、「人生そのもの」みたいな・・・ね。