最後の秘境、ブータン、アマンコラの5つのロッジを巡る食体験
アマンの5つのロッジを巡る
そんなブータンの独自の魅力と心の豊かさに気づき、2004年に、ブータン初の外資系ホテルを構えたのが、高級リゾート・アマンだ。サンスクリット語で平和なる旅を意味する「アマンコラ」という名前のもと、4年間のうちに、国際空港のあるパロ、古都ブムタン、絶滅危惧種であるオグロヅルが越冬する湿原のあるガンテ、ティンプーの前に首都だったプナカ、そして首都ティンプーと5つのロッジをオープンしていった。 ロッジはいずれもケリー・ヒルによるデザインで、車で2時間以上離れている各ロッジを車で周遊するゲストがほっとできるよう、どれも室内は同じ構造になっている。新しいロッジに到着すると、スタッフが「ウェルカム・ホーム」と迎えてくれ、違う場所ながら、同じ作りの部屋に通される。それは、まるで瞬間移動する自分の部屋のような感覚をもたらす。 そして、アマンらしい温かなホスピタリティに基づく特別な食体験はここならではのものだろう。5つのロッジで欠かせない食体験を挙げてみよう。 ブータンといえば、パロの断崖絶壁に建つ寺、タイガーズ・ネスト(タクツァン僧院)が有名だが、その約5時間のトレッキングの終盤に、驚きの食体験が待っていた。 低木をかきわけ、道なき道をいくと、突如現れるログハウス。笑顔のスタッフ冷たいおしぼり、ウェルカムカクテルに迎えられ、泥だらけの重い登山靴を脱ぎ、清潔なスリッパにはきかえる。これまで登ったタイガーズ・ネストの高みを見ながらいただく食事は別格だ。ちなみに、ロッジに戻ると、登山靴は熟練のスタッフの手ですぐにクリーニングされ、翌日に生まれ変わって返ってくる。 古都ブムタンでは、焚き火の炎を囲んで、地元の男女の踊り手たちの伝統舞踊を見ながら食事を楽しむことができる。日本の盆踊りのように円陣を組む踊りは、どこかノスタルジックな雰囲気に満ちている。 ガンテは、ジャガイモが特産品。元々収穫したジャガイモの保管小屋を改装して行う「ポテト・シャック・ディナー」では、室内が数えきれないキャンドルの灯りに照らされ、ハネムーンなどにぴったりな雰囲気だ。このキャンドルは客室で出る使いかけのキャンドルを溶かして作ったリサイクル。一切電力を使わないサステナブルな食事は、「伝統は一回りするとエシカルでロマンティックでもある」という現代の美意識を体現していた。 プナカはやや標高が低く、温かな気候が特徴的。ここはプールで泳げる唯一のロッジで、プールサイドには見事なジャックフルーツが実っていた。ここでは、清流を見渡す場所にテントを張って、目の前でシェフが焼いてくれるバーベキュー料理が絶品だ。