おおむね好評の『THE SECOND』優勝会見で新王者からこぼれた大会の課題とは
■エンタメと権威につながる厳しさ 『M-1グランプリ』を国民的な賞レースに引き上げたのは、一夜にして人生が変わるサクセスストーリーであり、勝者と敗者の残酷なまでの明暗だった。その背景には審査員の厳しいコメントがあり、だからこそ勝者と敗者のコントラストが際立ち、エンタメ度が上がるという要素がある。 その点、『THE SECOND』は、もちろんベテラン芸人たちへのリスペクトは大切だが、彼らに寄り添いすぎるとテレビ局のお客さんである視聴者の心をつかみづらくなってしまう。制作サイドが時に構成・演出面で厳しさを見せるくらいのほうが、王者と大会の権威につながっていくのではないか。 また、今回も「芸人として死んでいた」「ただ続けていただけ」「後輩たちに追いつきたい」「解散しかけた」などの切実な出場者コメントがたびたびフィーチャーされたが、そんな“苦労”が前提の構成も『THE SECOND』の課題に見える。 “苦労”が前提の構成は、感動と興ざめの紙一重。素直に感情移入できる人はいいが、あおりVTRを畳みかけられて冷めてしまう人もいる。例えば、浪花節だけでなく、全力の戦闘モード、まったくの無欲、終始ふざけまくる出場者がいてもいいのではないか。大会のコンセプトとしては浪花節で押したくなるのはわかるが、もし制作サイドにそれを誘導するムードがあるとしたら、テレビマンの悪いクセなのかもしれない。 ともあれ、芸人とお笑い通の評判がよく、フジとしても貴重な賞レースである以上、第3回以降の開催は既定路線。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』がそうだったように、続けながら試行錯誤し続けていくことが何より重要なことは間違いない。 ■ 木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。
木村隆志