メダカやチンアナゴ…小さな魚類でも遺骨を残せる 革新的な「火葬技術」で注目集めるペット葬儀社
ペットは今や家族同然の存在となり、亡くなったときは火葬したり動物霊園で供養したりする人が少なくない。ペットの火葬や葬儀を請け負う事業者の存在も珍しくなくなった。だが、体の小さいペットだと、火葬する際に骨ごと燃えてしまい遺骨が残らないというトラブルが起こり得る。しかし、メダカやチンアナゴといった超小型の魚類も火葬して、しかも「遺骨」が残ると聞けば「いったいどんな方法で?」と関心をもたずにはおられない。 【写真】自社開発した火葬炉…繊細な火力調整によって魚類の火葬も可能に ペット火葬・葬儀ハピネスを運営する株式会社プログレスの代表取締役・森山友祐子さんに聞く。
繊細な火力調整でメダカやチンアナゴも火葬して遺骨を拾える
ペットを家族の一員ととらえ愛情を注いで暮らしていると、亡くしたときは本当に大事な家族を失った気持ちになる。 「飼っていたウサギが亡くなって、会社を1週間も休んで動けないという方がいらっしゃいました」 それほど大事な家族だから、亡くなったときは火葬をして葬ってあげたいとの問合せが多いのだとか。 従来型の火葬炉では、体の小さなペットだと骨が燃えてしまって遺骨が残らないケースがしばしば発生するという。そのような残念なことにならないよう、森山さんの会社では繊細な火力調整ができる火葬炉を自社開発し、魚類の火葬も可能だという。技術的にはメダカやチンアナゴの火葬もでき、しかも拾骨もできるそうだ。 自社開発した火葬炉の特徴は、繊細な火力調整ができるほかにも、煙をらせん状の通路に通して、火葬炉の上に設けたスペースへ導き、煙に含まれる有害物質を火力で処理する。こうすることで、煙や有害物質を外へ出さない仕組みになっているとか。 「ご近所へ迷惑をおかけしない仕様になっています」 ちなみに、火葬炉の燃料は灯油だそうだ。 魚類の火葬依頼は、全支店を合わせて年に30件程度あるという。実際にメダカの火葬を依頼した人のアンケートには「メダカだからとバカにすることなく、丁寧に扱ってくれた。遺骨は一生手元に置きます」と、感謝の気持ちがつづられていた。「メダカでさえ」といえば失礼かもしれないが、愛情をかけている人にとっては大事な家族だったのだ。 素人考えだが、メダカのように小さな魚だと、火葬炉の中で骨ごと燃えてしまわないのだろうか。 「火葬炉には中の様子を見られる小窓があります。そこから状態を見ながら、火加減と風量を細かく調整します」 火力が強すぎると骨が炭化してしまったり、逆に弱すぎると焼き魚のようになってしまったりするという。 「他社様でも魚類の火葬はできるそうなんですが、ホームページで大々的に謳っておられるところは少ないですね」 火葬炉の性能と相まって、熟練の技が求められるそうだ。尚、魚類の遺骨は小さいため、ピンセット状の器具を使って拾うとのこと。 森山さんの会社では、骨格のある生き物で体重がおおむね40kgまで、奥行約115cmの火葬炉に入る大きさならば火葬できるという。所要時間は最短10分、体が大きい場合は4~5時間かかることもあるそうだ。遺族はその間、ずっと立ち会ってもいいし、別の場所で待機してもかまわない。 ペットの火葬を行う際は、まずは火葬台に遺体をのせて最後のお別れ。思い出の品や好きだった食べ物を供え、お焼香をする。オプションで、バスケットタイプの棺に遺体を納めることもできる。そして火葬を行い、終わったら約1時間かけて火葬炉をゆっくり冷却。その後、遺骨を拾って骨壺に納める。 骨壺は持ち帰ることもできるが、ハピネスと提携する共同墓地に埋葬することもできるそうで、人の葬儀と変わらない手厚さを感じた。飼い主にとっては、まさに家族を亡くしたわけで、火葬にあたるスタッフも常に厳粛な気持ちで遺族と接するよう心がけているという。