マキロイにそっくりと話題! ウクライナの血を引く期待のルーキーがZOZOチャンピオンシップ参戦【佐藤信人アイズ】
ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、マキロイに似ていると話題のマックス・グレイサーマンについて語ってもらった。 ローリー・マキロイのフェアウェイウッド後方連続写真(撮影/Blue Sky Photos)
今シーズン、ルーキーでプレーオフシリーズに進出したのは、成績順にマチュー・パボン、マックス・グレイサーマン、ニック・ダンラップ、ジェイク・ナップの4人です。そのなかで今回紹介するのはグレイザーマンです。 ニュージャージー州生まれ、デューク大卒の29歳。特に終盤戦で見せたジェットコースターのようなゴルフが印象的でした。7月末の3Mオープンまで、フェデックスランクは88位。125位以内での出場資格はほぼ確定で、ルーキーとしては目標をクリアした年と言えると思います。 その3Mで、首位と8打差で迎えた最終日に63を叩き出し2位となります。そして次戦となったウィンダム選手権でも2位。この試合3Mとは違い、最終日を首位で迎えると13番でセカンドをぶち込みイーグル。この時点で優勝したアーロン・ライに4打差をつけます。ところが続く14番パー4でダブルパー、続く15番パー5ではバーディを奪いますが、16番のパー3でまさかの4パットのダブルボギー。この瞬間一度はつかんだ初優勝が消えて無くなりました。 このような展開であれば、多くの選手は試合後のインタビューを断るもの。ところがグレイサーマンは極めて普通に「残り5ホールで4打差の位置にいたことを誇りに思う」「8を叩いた次のホールでバーディを奪えたことが自信になった」と、ポジティブな受け答えをしたのです。 イーグルを取った場面でも、ガッツポーズをすることもなく、表情を変えることもありませんでした。この冷静さの裏には彼の"出自"があるかもしれません。 両親は旧ソ連のウクライナ出身で、ともに亡命したアメリカで出会い生まれた男児がグレイサーマンです。父は後にコロンビア大学の教授を務める数学者、母はスカラシップで大学を卒業したテニスプレーヤー。その両親の遺伝子を受け継いだのでしょう。 人生のAプランはプロゴルファーとしつつも、Bプランとしてビジネスマンの道も考えデューク大を選びます。実際、コーンフェリーツアーで戦っていた21–シーズンは、手首の手術もあってゴルフを離れ、不動産業の道を模索したこともあったとか。ちなみに一時は金融業の道に進み、一度はゴルフから離れながらも再びシード選手に返り咲いたのがベン・グリフィン。1つ年下で大学時代から仲がいいグリフィンに、この時期何度か相談もしたそうです。 現在、世界ランクは50位。50位以内に入るとメジャー出場が可能になるため、PGAツアーフォールシリーズの活躍に期待です。プレッシャーのかかる場面でも表情を変えず、また大叩きしても崩れないメンタルの強さで、初優勝も近いかもしれません。 両親とも現在戦火のキーウ出身で、一度、2人が育った場所を訪れたことがあり「何もないところから出てきたんだなと思った」と言っています。「もう一度、訪れたい」という夢が実現するときには戦争が終わり、そしてきっとPGAツアーの優勝経験者になっているのではないでしょうか。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年10月29日号「さとうの目」より
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