「おじいちゃん、おばあちゃんのお菓子」じゃない!脳梗塞を乗り越えた8代目が挑む「煎餅のシズル感」 銀座で220年、老舗が手がける煎餅の再構築とは ~松﨑商店前編
◆社員に自分を知ってもらうことが将来を左右する
――まさに波乱万丈ですが、コロナ禍で本店を移転するという判断は社内でどう受け止められたのでしょうか? 松﨑 スタッフも「店舗を閉じるのはわかる。でも移転してさらに面積を広げるなんてどういうことなのか」と驚いたでしょうね。 ただ、反対の声はなかったですね。 要所要所の社員には事前にしっかり話していましたから。 いきなり判断をくだしたわけではありません。 やはりファミリービジネスにおいては、こと、コミュニケーションが重要だと思います。 社長にはなれても、周囲が納得するかといったらそうではない。 下積みも何もなしに、まったく違う畑からやってきた人間がいきなり役員になったらなおさらです。 だからこそ、積極的に話すなり喧嘩するなり、社員に自分を知ってもらうことが今後を左右する。 あとは表面的に取り繕わないことですね。 つじつまが合わないことを口にすると、一気に信頼を失ってしまう。 知識がないならそれを説明して「わかりません」でいいわけです。 私も工場のことは一切知ったかぶりしません。 自分に正直に、考えをしっかりと積み立てた上で言葉を使う。 自分が納得したことしか言わない、やらないというのは血かもしれませんね。 父もすごく頑固でしたから。
■プロフィール
株式会社松崎商店(屋号:銀座 松﨑煎餅)代表取締役 松﨑宗平 1978年、東京・銀座生まれ。大学卒業後、グラフィックおよびウェブデザインを行うIT企業での勤務を経て、2007年に株式会社松崎商店(屋号:銀座 松﨑煎餅)へ入社。2018年より代表取締役社長を務める。バンドoysm/SOURのベーシストとしても活躍する。
(文・構成/埴岡ゆり)