ラグビーW杯、アイルランドが快勝したスコットランド戦に日本がつけいる弱点は見えたのか?
貴重な敵情視察の機会だった。22日に横浜国際総合競技場でラグビーワールドカップ(W杯)のアイルランド代表対スコットランド代表戦が行われ、試合前時点で世界ランキング1位だったアイルランド代表が27―3で勝利。4トライ以上を挙げ、ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得した。 アイルランド代表と世界ランキング7位のスコットランド代表は、毎年開催される欧州6カ国対抗戦でぶつかる間柄。上位2チーム以内に入り初の決勝トーナメント進出を果たしたい日本代表にとっては、いずれも避けては通れぬ関門だ。 日本代表は、この日、次戦会場のある静岡へ移動。テレビでゲームを見届けた。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと親交の深い藤井雄一郎強化委員長は、こう語っていた。 「お互いがお互いを知り尽くしていて、おそらくお互いの弱いところを突いていくと思うので、そこを見たいです」 ファンが気になるのは、この上位国の弱点はあるのか、あるとしたらどこにあるのか、という点だろう。下剋上の条件には、自軍の強みと相手の弱みとのマッチングがあり、スタンドオフの田村優も「相手の弱みを自分たちのプランでどう突くか(という観点を持ちたい)」という。 もっともアイルランド代表は目立った隙のないチームである。 雨と風の舞うこの日も、スコットランドの走路とパスコースを読みきったような組織防御、時折、仕掛けるチョークタックル(相手を掴み上げるタックル)で動きを封殺。攻めては、スタンドオフのジョナサン・セクストンら意思決定者が相手防御のくぼみへ強い突破役を走らせ、モールやキックの再獲得でもスコアを重ねた。
フッカーのローリー・ベスト主将が「いいスタートが切れた」と誇るアイルランド代表からつけ入る隙を見出すとしたら、(1)グラウンド中盤での防御時にせりあがったウイングの背後(グラウンド両端の奥側)にぽっかり空くスペース、(2)片側のサイドをうまくえぐった際に反対側の防御もかすかに乱れる傾向、(3)点差をつけて迎えた終盤にリロードがやや遅れ気味、の3つくらいだろうか。 このうち(1)と(2)は、それぞれ前半の中盤以降に起こり(1)の局面ではスコットランド代表が敵陣深い位置でラインアウトを獲得。(2)の場面では攻撃にミスが出て悔やまれた。スコットランド代表は、試合終盤もボールが手につかず、カウンターアタックで奮闘したフルバックのスチュアート・ホッグもうなだれていた。 「彼らの防御については長い時間をかけて分析したが、(この日は)選手によって異なる防御のスタイルがあって、それが最終的に彼らの強いプランを作り上げていた。賢いと感じました」 自前の攻撃陣形で相手の弱点を突くプランの構築は、日本代表のトニー・ブラウンアタックコーチの得意な作業。攻撃戦術のほぼ全権を担うブラウンは、この一戦と別な文脈で「私たちは二度と同じアタックはしない。いつも新しいアタックオプションを持っています」と話したことがある。 練られた計画を遂行するには、体格差で苦しまされそうな接点で素早くボールを出し続けること、他の14人の素早い位置取りと声掛けで田村の状況判断を容易にすることなど、選手が、「ディテール」と表現する項目をすべてチェックするしかない。 大会前の南アフリカ代表とのウォームアップマッチで苦しんだハイボールの競り合いが、アイルランド代表の得意分野である点も見逃せないだろう。