©️2024 Nameko Shinsan

　常日頃、炎上の的になりがちな有名人。先日、星野源さんが事実無根のW不倫疑惑でバッシングされるという理不尽な出来事がありました。星野さんは「日本中から憎悪を向けられた感覚」と、その時のつらさを語っていました。たたいている人は、相手が傷付こうが体調を崩そうが一切気にしていないと思われますが、相手も生身の人間ということを忘れてはいけません。 　芸能人の場合、何か見えない壁に守られていて安泰だと思われがちです。でも、よほどメンタルが強い人でない限りSNSの悪口には心が削られます。たたく側は、自分が正しいという思い込みで優位性を感じ、相手を弱らせることに快感を覚えるのかもしれませんが・・・。江戸時代の市中引き回しの刑などを見物していた、先祖のあしき風習の記憶が、現代人の遺伝子に刻まれているのでしょうか。もし自分が言われたら、炎上の的になったら、ということを時には想像するのも必要です。 　でも、最近の芸能人は黙って中傷されているだけでなく、反撃する気概があるようです。優木まおみさんは「髪をおろしてるのが不愉快です（中略）結婚してるからって調子に乗らないで下さい」という言いがかり的なダイレクトメールを受け取り、即ブロックしたと報告。丸山桂里奈さんは「赤ちゃんを預けてまた焼肉食べてるの?」と意見され、「どこの誰かも知らない人にそんなこと言われなきゃいけないんだか」と心情を吐露しました。 　海外に滞在しているフワちゃんは、ラジオ番組で「ヨーロッパでは、Yahoo!ニュース見れません」「ざまぁみろ」「おまえらの声は一生届かない!」などとヤフコメ民を挑発。逆に気にしているのでは? という意見もありましたが、ここまで応酬できるメンタルはすごいです。また、工藤静香さんも新曲にアンチへのメッセージを込め「誹謗（ひぼう）中傷　もはや弱小」といったフレーズがあるとか。長年いろいろ言われ続けて我慢の限界に達したのでしょう。挑発されたと感じた人々がさらに逆襲しないことを願います。 　毎回言動が炎上し、嫌いなセレブランキング1位にもなっているのは英国のヘンリー王子の妻、メーガンさんですが、バッシングされても露出度の高いドレスで登場するなど、メンタルの強さに驚かされます。絶対的な自己愛や、ゆるぎない自己肯定感があれば、何か言われても動じないのでしょうか。炎上対策の一つは自己愛だと教えてくれる存在です。 【KyodoWeekly（株式会社共同通信社発行）No. 26からの転載】 辛酸なめ子（しんさん・なめこ）／漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」（筑摩書房）、「スピリチュアル系のトリセツ」（平凡社）、「無心セラピー」（双葉社）、「電車のおじさん」（小学館）、「大人のマナー術」（光文社新書）など多数。