仕事に行き詰まったときにはSF映画を見るといい? ブレイクスルーをもたらすSF思考とは何か
「SF思考」とは、サイエンス・フィクション(SF)の持つさまざまな力を活用して、産業の活性化やイノベーション創出を目指す考え方。「SFプロトタイピング」とも呼ばれます。VUCAの時代には、理想の未来像を描きアイデアを形にする力が求められます。SF思考では、SFの持つ想像力を育む力や未来社会を描く力、人を楽しませる力などに着目。作家や編集者など、SFに携わる人たちの思考法をフレームワーク化したものを、ビジネスに活用する動きが広がりつつあります。
SF映画が革新のきっかけになることも SF思考で望む未来を創り出す
今から100年後の世界はどうなっているでしょうか。 宇宙旅行が身近になっていたり、自動運転が当たり前になって運転免許証がいらなくなっていたり。さまざまな想像が膨らみます。では、昔の人たちは現在をどのように想像していたのでしょうか。1960~70年代のSF映画を振り返ると、地球をエイリアンが支配しているようなフィクションも多いですが、現在の様子を予測したものが数多くあります。たとえばビデオ通話やドローン、ロボットなどです。 SFは当時の 科学技術をベースにしたフィクションで、各時代の技術の延長線上にある未来が描かれてきました。一方で「携帯電話」など、SFのストーリー内で創造されたものがイノベーションのきっかけになったと言われるものもあります。 昨今注目されている「シンギュラリティ」も、もとはSFから生まれた概念です。AIが発展して学習を続けることで意思決定の担い手が人間からAIになり、予測不能な変化が起こるというシンギュラリティは、米国の未来学者とSF作家が共同で生み出したもの。 実際の世界もまた、SFに負けず劣らず予測不能な事象の連続です。新型コロナウイルスの感染拡大や、グローバル化の揺れ戻しのような自国第一主義の台頭。 何が起こるかわからない現代においては、想像もしなかった未来社会を思い描く力や柔軟な発想力が必要です。 国内では、三菱総合研究所が筑波大学と共同でSFを活用して未来につなげる「SF思考学」の研究に取り組んでいます。SFの持つ力がどのように産業に活用できるかの実証を進めており、具体的な活用法の一つに企業のワークショップがあります。参加者同士でありたい社会や未来の出来事を考え、バックキャスティングで新しい産業や街づくりに落とし込んでいきます。また、グループで一つのSFストーリーを作成し、新規事業のアイデア出しにつなげるなどの事例があります。 未来を描くのにSFを用いるメリットは、異分野の人たちが協働しやすいこと。情報や専門知がたこつぼ化している現代において、異なる分野の情報を結びつける媒介は重要な存在です。多様な分野をつなぐ架け橋としても、SFは期待されているのです。