進化したJR四国の振子特急、2700系「南風」の実力 出力も設備もランクアップした最新の気動車
番の州高架橋から雄大なカーブを描いて宇多津に到着すると、高松発の「しまんと3号」が渡り線を通って後部に入線。2755+2707のモノクラス2両編成を「南風」の後部に連結した。号車番号は4・5を飛ばして6・7号車である。 丸亀で「あかいアンパンマン列車」編成の「南風2号」とすれ違い、都市の景観を離れて多度津からは単線の土讃線に進む。善通寺に続いて琴平に停車する。 ■2000系の1.36倍のハイパワーで四国を横断
土讃線はこれより非電化区間となって山間に分け入り、まずは吉野川流域へと讃岐山脈を越える。速度は平坦区間の時速120km台から時速80kmに近い時速70km台まで下がるものの、25パーミル勾配に右へ左へ半径300mの曲線が絶え間ない中を振子を駆使して突進する速度感は、決して遅いと言えたものではない。 各車2台装備するエンジンは、1基あたり331kWで馬力の数値は450PS。2000系(330PS)の1.36倍、N2000系(350PS)の1.28倍という高出力だ。このエンジンのパワーアップにより発車時の加速が一段と鋭くなっており、平坦線ではわずか60秒で時速100kmに到達する。高速域の加減速の反応もひとしおで、新幹線接続列車として必須の定時ダイヤの維持に貢献している。県境のトンネル内の直線はすかさず時速100kmオーバーに持ち込む。下り勾配は排気ブレーキが唸る。
その一方、最新の振子車両であるJR西日本の新型「やくも」273系は、曲線進入進出時の振子動作のズレを完全に解消する「次世代振子システム」を採用したが、誕生が5年早い四国の2700系は従来タイプの制御付き自然振子である。双方ともの開発者である鉄道総研によると、2700系を製造した当時、次世代振子は残念ながらまだ最後の課題をクリアできていなかったためであるそう。 進行右手眼下に吉野川を挟む街を見下ろしながら箸蔵を通過。「しまんと4号・南風4号」の5両編成が運転停車していたが、こちらは速度を下げない。振子と合わせた高速化メニューの中で多くの駅を一線スルーにしているので、ともすれば駅通過に気付かぬほどスムーズだ。