「入居金は最高4億円超え」超高級老人ホームの実態 行列店の職人が寿司を握り、専門スタッフが御用聞き…その「お値段以上の価値」とは?
人気寿司店や銀行の出張サービスも
レストランには30種類以上のグランドメニューに加え、日替わりメニューまで用意されている。毎週木曜日には、世田谷の梅丘(うめがおか)に総本店がある美登利(みどり)寿司の職人が出張して来て、寿司を握るという。 「この寿司屋は行列のできる店としても有名ですが、ここでは並ばずにお寿司を食べることができます」 窓の外には日本庭園が見える。庭園の池には錦鯉が泳ぎ、秋になると紅葉(もみじ)が真っ赤に染まる。冬には一面、綺麗な雪景色になることもあるそうだ。 錦鯉は昔から縁起物であり、権力や富の象徴だった。かつて田中角栄元首相も愛好していたという。そんな錦鯉が水面からわずかに跳ね上がったとき、優雅に演出された施設で暮らす居住者の姿と重なって見えた。 サクラビア成城では、野外でのイベントも頻繁に催される。 「例えばこちらでバスをご用意して、皆さんで近隣の遊園地へイルミネーションを見に行ったり、砧(きぬた)公園にお散歩ツアーに行ったりもします。以前にはディズニーランドや横浜中華街に行ったこともあります」 どのコースも庶民的で、まるで高校生の遠足のように思えた。 1階正面を入るとロビーだ。右手にはフロントがあり、壁には、19世紀に活躍したフランスの画家、カミーユ・コローの風景画が飾られていた。 フロントには常時スタッフがいるため24時間出入りも自由だ。フロントの横には小さな机があり、驚くべきことに、週2日提携先の銀行が出張して来るという。銀行窓口での取引をここで行えるが、預金の引き出しについては後日の対応になるそうだ。 生活面から健康、娯楽に至るまで十分な環境が整っていることは、石塚氏の案内だけでもよくわかった。 文/甚野博則 写真/PhotoAC
---------- 甚野博則(じんの ひろのり) 1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして、週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)がある。介護に関する情報提供はぜひ(hironori.jinno2@gmail.com)までお寄せください。 ----------
甚野博則
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