停電長引く能登支援で感じた「いざという時の電源」問題。Starlink+ポータブル電源でスマホが使えるように
Starlink用の電源としても活躍
1月3日の第1陣を皮切りに、支援依頼は翌4日以降も続々と届いた。防災イベントで知り合った災害支援ボランティア団体や、そのつてでジャクリの支援を知った人たちなどとも連絡を取り合い、ひたすらポータブル電源を送り続けた。 「ピークだった1月4~5日あたりは、朝から晩までずっと支援作業に明け暮れていました。LINEやMessengerのグループチャットが10個から20個くらい同時並行で走っていたと思います」(鈴木達也さん) 能登半島地震では携帯基地局も大きな被害を受けた。ジャクリのもとには、Wi-Fi接続でスマートフォンを使うためにスペースXの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」を動かせる電源がほしいとの要請も相次いだ。 「Starlinkとポータブル電源の組み合わせは、東日本大震災のときにはなかった支援の形。それだけに感慨深かったです」(鈴木広介さん) ほかにも、崩れそうなブロック塀を電動工具で壊して撤去するといった作業、避難所の電子レンジから炊き出しに使う電気炊飯器、学校の食洗機まで、さまざまな現場でポータブル電源が活躍したという。 「炊き出しの道具ってみんな大きいんです。大きな釜、大きなガスボンベ、それを運ぶハイエースのような大型車両など。でも『ジャクリがあれば、支援拠点で作ったものを保温して持っていけば温かいものを出せる。炊き出しのハードルが一気に下がった』と言われました」(鈴木広介さん) 支援作業がひと段落した1月17日までの間に、金沢県の輪島市、珠洲市、能登町、穴水町を中心に、計260台、2400万円相当のポータブル電源とソーラーパネルを無償提供した。
「避難所開設時にポータブル電源が必要」の声
一方、今回の支援活動を通して、災害支援における課題も浮き彫りになった。 「一番苦労したのは輸送手段でした。被災地の道路が寸断されていたので、最も被害が大きく、電源が必要とされていた輪島市や珠洲市などの半島の北西部に製品をどう届ければいいのか。どのルートが使えるのか。毎日そればかり考えていました」(鈴木達也さん) 仕事上の付き合いがあった航空会社に頼み込み、被災地までヘリコプターで運んでもらったこともあったという。 今後については、ポータブル電源が災害時に役立つという認識をいかに周知していくかが重要になる。 「災害支援ボランティア団体の方から、避難所開設時にポータブル電源があるのがベストと言われたんです。『ポータブル電源があればスマホで安否確認ができる。それだけでだいぶ違う』と。 確かにそうなんです。発災後に注文いただいても、届くまで数日はかかってしまいますから」(鈴木広介さん) 災害への備えという点では、天候にもよるが、ガソリンの備蓄が必要な発電機と異なりソーラーパネルを使って充電できる点も安心材料になる。 「今回は地元ルート、災害支援団体ルート、ヘリコプタールートの3つのルートを駆使して、現地に製品を届けました。現在は災害ボランティアの人が集まるボランティアセンターなどに、製品を置いてもらっています。 そうした場所で災害ボランティアの方々に(普段から)スマホの充電などに使ってもらうと、次にどこかで災害が起きた時にポータブル電源の使い道をすぐイメージできると思います」(鈴木達也さん) ジャクリとしては引き続き、イベントなどを通し、防災用品としてのポータブル電源+ソーラーパネルの認知度向上に力を入れていく考えだ。
湯田陽子