9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山谷の「現在を切り取る」意味
ドヤがなくなれば、もう「山谷」ではなくなるが
~~~ 現状のドヤは本来の旅館業ではなく、生活保護受給者の受け皿として経営が成り立っている。それが一〇年、二〇年、確実な方向性としてあり続けられるかといえば、おそらく難しい。物件が老朽化すれば改修してまで続けたいと思うところはかぎられるだろうし、すでに跡継ぎがいなくて廃業するところもある。最近では、ドヤの跡地にマンションが建つことも増えている。歴史のなかに「山谷」は存在し続けるだろうけれど、ドヤがなくなれば、もう「山谷」ではなくなる。こういう大きな流れがある一方で、「山谷」へのノスタルジーを未練がましく引きずって「山谷っぽさ」を何とか残そうとしている支援者がいる。正直なところ、そんな構図なのかな。(259~260ページより) ~~~ 1984年以来、ホームレス状態にある人や生活に困窮している人への支援を続けている「山友会」副代表の油井和徳さんは本書でこう述べている。続きはこうだ。 ~~~ 山谷がなくなっても、ここで生きてきたような人を支えていくことが必要なときに、山谷が培ってきた「文化」みたいなものが生かされるのであれば、それが街を残す形の一つになるかもしれない(259~260ページより) ~~~ 確かにその通りなのかもしれないが、実のところ今後、この街はどうなっていくのだろうか。 印南敦史(作家、書評家)