上白石萌歌「泳いでいるときが“無”になれる」『リア王』で3年ぶりの舞台に挑む
上白石萌歌が直近に出演したドラマでいえば、『パリピ孔明』の月見英子として歌う姿が印象的だったが、他にも多くの作品での演技や歌唱で、ますますその才能を発揮している。そんな彼女が3年ぶりに舞台に挑む。演じるのは、シェイクスピアの四大悲劇の一つである『リア王』の三女・コーディリア。素の彼女の優しい眼差しは、舞台に立ってコーディリアが宿ったとき、どのように変わるだろうか? 【写真】上白石萌歌さんインタビューフォトギャラリー
表現への期待と情熱
――今回の『リア王』は、2022年に『セールスマンの死』を斬新な演出によって、日本の演劇界に衝撃を与えたイギリス出身の演出家・ショーン・ホームズが手がける。これまでに日本で彼が演出した作品は3作上演されているが、上白石はそのすべてを観劇している。 上白石: 最初に拝見したのは『FORTUNE(フォーチュン)』という作品でしたが、先に観た友人から“絶対に観ておいた方がいい”と勧められたことがきっかけでした。 そして今回リア王を演じる段田安則さんが主演をなさった『セールスマンの死』、そしてチェーホフの戯曲『桜の園』、どれもいわゆる古典的な戯曲ですが、それぞれにショーンならではの“現代の風”を吹かせているようなイメージがあります。 『セールスマンの死』は姉と一緒に観に行ったんですが、舞台の真ん中に黄色い冷蔵庫が置かれていたことが、とても印象的でした。姉とは帰り道で、“あの冷蔵庫は何を象徴していたのだろうか”というお互いの感想を話し合ったのですが、“私は冷蔵庫が人間みたいに思えた”とか、“主人公が最後に冷蔵庫の中に入っていく描写を見て、まるで棺桶のように思えて、人間の生と死の象徴みたいな感じだった”とか、話が尽きませんでした。 ショーンの舞台装置は床と壁だけというシンプルなことが多くて、そこに現代にもあるようなアイテムが置かれていることで、それが何を意味するのかと考えさせられます。答えを提示してくれないけれど、そこにしがみついていくことに面白さを感じていたので、『リア王』でも、ショーンにしか作り出せない世界が絶対にあるだろうと期待しています。