『マウンテンドクター』Snow Man 向井康二の哀愁漂う感情表現 軽装登山の問題にも言及
山に喚起されるモチーフを織り込むことで説得力のある群像劇に
なお、昨今、軽装での登山者が議論の的になっている。特に人気のある富士山を短パンにサンダルという、まさに第8話のようないでたちで登ることに批判が寄せられている。個人的に、安全性が確保できるなら軽装のメリットも十分にあると考えるが、一般論として、劇中で歩が語った内容は妥当といえよう。富士山も、日の出前の山頂は夏でも気温が10度以下で、天候によって体感温度が氷点下になる。不慮の事態に備えて、医療や救助の世話にならず、自力で登って降りられるだけの装備はしておきたい。 医療ドラマとして王道感が漂う『マウンテンドクター』だが、ドラマの舞台としてだけでなく、乗り越えるべきものの象徴としての山は、登場キャラクターの関係にも当てはまる。内科医として実家のクリニックを継ぐことを期待されていた典子は、母の聖子(池津祥子)に向けて麻酔科医としての願望をぶつけた。それでもなお都合よく解釈する聖子の前で救急の呼び出しに応じることで、親子の対立は決定的となった。山に喚起されるモチーフを一つずつ丁寧に織り込むことによって、説得力のある群像劇となっている。
石河コウヘイ