【ももすももす×イララモモイ インタビュー】誰かの心に残って残って残り続けて、消えない言葉を紡ぎ続けたい
ももすももすにとってレコード会社移籍後初となるフルアルバムにして、約3年9カ月振りの2ndアルバム『白猫浪漫』がついに完成した。それを記念し、本誌では今作のアートワークを手がけた漫画家のイララモモイとの対談を実施! 唯一無二のオリジナリティーと猫への偏愛に満ちたこの傑作についてさまざまな角度から掘り下げたい。 ももすももす×イララモモイ インタビューその他の写真
こんなに肯定してくれる人がいる世の中、捨てたものじゃない
──まずは、対談に入る前にももすさんにおうかがいします。今作の制作にあたって心情的なところなど、何か変化はありましたか? ももす:以前よりも自分の終着点を考えるようになりましたね。もともと生きることと死ぬことについてはよく考えていたんですけど、“最後に何が残るのかな?”と考えた時に、できるだけ誰かの心に残って残って残り続けて消えないような言葉を紡ぎ続けたいと思ったんです。なので、終わりの時に何を思うか、何を言いたいか、そういうことを考えながらユーモラスに曲を書きました。Xにも書きましたけど、まさに遺言みたいな作品になったと思っています。ただ、今は猫を飼っているので、猫のためにも生きないといけないんですけど(笑)。 ──やはり猫が生きるモチベーションなんですね。音楽についてはどうでしょう? ももす:そもそも、私は生きるモチベーションというものがあまりないんですよね。欲望がほとんど何もないんです。人間はなるべく欲望を感じたほうが楽しく生きられるじゃないですか。その欲望を探す行為のひとつが作曲なんだと思います。あと、音楽でしか社会とつながることができない人間なので、私にとっては最後の生きる術でもありますね。 ──なるほど。さて、そんなニューアルバム『白猫浪漫』のジャケットをイララモモイさんが手がけられているわけですが、そのきっかけも含め、おふたりの出会いから教えてください。 イララ:私が先にももすさんのことを知ったんです。私のファンの方から“好きそうだから聴いてください!”ってももすさんの曲を教えていただいて。それで楽曲を聴いたらものすごく好きになりまして。その時は『サイコミ』さんで今連載をしている『付き合えなくていいのに』という漫画の連載準備をしていたんです。昨年まで大学院に通ってもいたので、いろんなことを同時に考えてやっていかなきゃいけない時期だったので、頭もパンパンだったし、すごく大変で。でも、ももすさんの曲を聴いたら、なんだか頭が整理されていく感覚があって、すごく前向きになれたんです。なんて言うのかな? 大変な状況に対しても“おもしれーじゃねぇか!”みたいな気分になれたというか(笑)。“この曲と一緒だったら楽しくやっていけるぞ”って。実習に行っていた頃でもあったんですけど、実習先がすごい坂道だったんですよ。でも、ももすさんの曲を聴きながら勇ましい気持ちになって坂道を登っていった記憶が今でも鮮明に残っていて…すみません、しゃべりすぎてしまって(苦笑)。 ももす:いえいえ、とても嬉しいです。 ──ちなみに最初に聴いた曲というのは? イララ:「隕石」(2020年3月発表のアルバム『彗星吟遊』収録曲)です。私の中では『付き合えなくていいのに』のテーマソングみたいに勝手に思っていて(笑)。作品ページとかで“この曲を聴きながら読んでください”と紹介したりもしたんですよ。それで、ある時に“いつも聴いてます! 大好きです”って一方的にももすさんへDMを送らせていただいたのをきっかけに、直接やりとりさせていただくようになりました。 ももす:“こんなに自分のことを肯定してくれる人が世の中にいるんだ!? 捨てたもんじゃないな”って思いました(笑)。そんなふうに知り合う中で、今度のアルバムでは私をとても好きでいてくれる人にジャケットを描いてほしいと思い、イララさんにお願いしたんです。 ──ももすさんはイララさんのどういったところに魅力を感じたのでしょうか? ももす:イララさんはすごく頭がいいんですよ。だからこそ、人間の繊細な部分とかを漫画でややこしくも面白く分かりやすく描いていらっしゃって。そこがすごくいいなと思いますね。 イララ:嬉しい! ありがとうございます。 ──ジャケットを描いていただくにあたってはどんなやりとりを? ももす:最初に事務所で全曲聴いていただきました。その時に初めて直接お会いしたんですけど、そこで1曲目に「十二単と猫と宇宙。」があって、私が十二単を着た写真を撮るので、それをモチーフに現代と歴史的なものとがマッチするようなジャケットにしていただきたいというお願いをしました。 ──初対面でいきなり音源を聴くって、なかなかな状況ですね。 イララ:ものすごく緊張しました(笑)。それで言ったら、ももすさんはきっと私が男か女かも分からない状態だったと思うんですよね。たぶんお互いに緊張していた気がします。 ももす:でも、終わったあとは一緒にご飯へ行って、お酒を呑んで(笑)。 イララ:楽しかったです。近所のお店に連れて行ってもらったんですよ。 ももす:そのあとも2、3回一緒に呑みましたよね。恋愛の話だったり、人間の善悪に関することだったり、いろんな話をして。 ──恋愛から人間の善悪の話って振り幅がすごい(笑)。イララ:そう言えば、ふたりで海へ行ったりもしたんです。 ももす:そうそう! 絵を描くための参考にDTMの機材を見てもらおうと思って私の家に来ていただいたことがあったんですけど、そのあと突発的にふたりで江ノ島へ行ってビールを呑んで帰ってきたという(笑)。 イララ:その日はめちゃくちゃ天気が良くて、急に“海、行きたいね”って。 ──きっとおふたりの波長が合うんでしょうね。 イララ:私はももすさんとは逆に、生への欲望まみれというか、売れてお金持ちになりたいとか、そんなことばっかりで(笑)。でも、ももすさんの世界観はすごく好きだし、MVとかを観ながらインスピレーションを働かせて、“こういう絵を描きたい”“こういう雰囲気を作りたい”と思わせていただいているので、波長が合うと言っていただけるのは嬉しいですね。 ももす:私も嬉しいです。 ──イララさんは今作を聴いてどう感じられました? イララ:初めて聴いた時はまだデモ段階の曲もあったんですけど、光栄すぎてマジで涙が出るかと思いました(笑)。私は本当にももすさんの書かれる歌詞がすごく好きなんです。サビの部分とかキャッチーだし、共感性も高いんですけど、それだけじゃないというか…なんだろう? 理解させないところ? 分からせるばかりじゃない歌詞もいろいろと散りばめられているのが素敵で。それは、そういう発想力がある人しかできないことだとどこかで聞いたことがあるんですけど、ももすさんは一見、関係のないような単語をうまく組み合わせて言葉を作るのがすごく上手だと思うんです。 ももす:あら、嬉しい! お父さんとお母さんに聞かせてあげたい(笑)。 ──確かに「十二単と猫と宇宙。」だって、単語だけ見れば全然つながりがなさそうだし。 イララ:そうなんですよね。十二単も猫も宇宙もカテゴリーとして共通点を見つけるのが難しいですが、ひとつになることで不思議とももすさんの世界観としての統一感が生まれるじゃないですか。メロディーともばっちりハマって自然と耳に残るし、言葉自体の可愛さとか口に出したくなる感じもあって、そういうところが本当に好きなんです。まさに宇宙みたい。 ももす:ありがとうございます! イララ:私の中に“ももすさん感情”というものがあって、それって“悲しい”でも“嬉しい”でもなく、ももすさんの曲を聴くことでしか生まれない感情なんですけど、今回もそれがすごく感じられて幸せでした。