本田が移籍するACミランとは
周囲を固めるのは各国の代表選手たちだ。1トップにはイタリア代表の得点源となっているバロテッリ。奇想天外な私生活や行動面でも注目を浴びる点取り屋は、身体能力が特筆される。本田と同じ「2」の左サイドには元ブラジル代表のMFカカ。シャープなドリブルとパス、的確なフィニッシュ能力を持ち、本田が「剛」なら、カカは「柔」。2人はバランス良いハーモニーを奏でるはずだ。 後方にはオランダ代表の攻守の軸になっているMFデヨングがにらみを利かせる。デヨングの両脇をイタリア代表MFモントリーボ、ガーナ代表MFムンタリらが固め、派手ではないが世界クラスがそろい、守備陣も各国代表が並ぶ。 この一流クラブの重圧は並大抵ではない。過去のACミランの背番号10はフリット、ユーゴスラビアの天才肌サビチェビッチ、クロアチアの至宝ボバン、ポルトガルの名指令塔ルイ・コスタら蒼々たる選手が背負ってきただけに、本田にかかる期待は想像を絶するはずだ。 それでも、ACミランを90年代後半に3シーズン率い、セリエA優勝に導いた日本代表ザッケローニ監督は「本田には技術、体力、そして名門クラブに必要な精神力、パーソナリティーがある」と高く評価。そのメンタリティーを持ってすれば、名手がそろう超名門の中で埋没しない「個」を発揮できるに違いない。 通常、シーズン半ばからの移籍はメンバーが既に固まっている状態で加入することになるため、定位置獲得には不利が生じるとされることが多い。だが、ACミランはセリエAで不振のまっただ中で再浮上へ向けてもがいている。そんなクラブへの逆風が本田にとっては「追い風」になる可能性すらある。 本田のACミランでの立ち位置は来年6月12日に開幕するW杯ブラジル大会における日本代表の成績にも直結する。日本の大黒柱がクラブで出場機会を得られず、試合勘を失う状況にでもなれば、日本に一気に暗雲が漂うはず。ただ、本田が名門で確固たる地位を築き、レベルアップすることができれば、日本にとっては大きなプラス。ACミラン、そして日本の命運を握る男の新たな舞台での挑戦が、間もなく幕を開けようとしている。