ポスト中村憲剛と称される福島の大関友翔。ケンゴさんからの0.5歩分の教えと“性格が悪い”と褒められた意味【インタビュー2】
奈良戦のゴールに詰まっていた成長
今季、岐阜との開幕戦(●1-4)に先発出場した大関は、2節の宮崎戦(〇2-1)ではプロ初ゴールを奪ってみせた。 1点リードで迎えた38分、敵陣のちょうど真ん中あたりで後方からのパスを引き出すと、左足で丁寧にトラップしながらターン。そのまま持ち運び、数人のDFをいなしながら、右足でコースを狙ってネットを揺らした。 「開幕戦は自分たちのサッカーはできたんですが、想像以上に点差も開きました。でも(寺田)周平さん(監督)がぶれずにやっていこうとの意思表示をしてくれ、チーム全員が自信を持って宮崎戦に臨めたなかで、今年、自分自身が目標にしているゴールに向かうプレーを出すことができました。初ゴールということもあって本当嬉しかったですね」 昨季、川崎で試合に絡めなかった悔しさも込められていたのだろう。大きくジャンプしながら両腕で力強く作ったガッツポーズは心を震わす熱があった。 「ただ、ゴールパフォーマンスがめちゃくちゃダサいって言われました(笑)。初ゴールおめでとうより、パフォーマンスをどうにかした方がいいっていうメッセージばかりで(苦笑)。両足で飛んで、両腕、両足、すべてが伸びちゃって。でもあれは自然で、もう嬉しすぎて気持ちが爆発しちゃったんです。 僕も本当はもっと格好良くするつもりだったんですよ。ただ、自分でも映像を見返したらひどいな、ダサいなと(笑)。ユースの時はゴールを取ってもスカシていた分、気持ちを前面に出すゴールパフォーマンスに慣れていなくて、ああなっちゃったという形でした。でもプロ初ゴールだから仕方ないですよね。ケンゴさんもメッセージをくれて嬉しかったです」 いきなり結果を残し、勢いに乗れたのだろう。その後、大関は4つの得点を重ねているが、中でも13節の奈良戦(〇2-1)のゴールが印象に残っているという。 1-0の64分、相手ペナルティエリアの右脇で、後方からの縦パスを受けた大関は前に大きくコントロールをミスしてしまう。しかし、DFがカバーに走ってくるなか、諦めずに追いかけてゴールラインギリギリでスライディングでマイボールにすると、味方とのワンツーでエリア内に切り込み、相手と競りながら左足で強烈なシュートを突き刺した。ゴール後の寺田監督との熱い抱擁も印象的だった。 「裏に走って良いボールを出してもらえたんですが、トラップミスでライン際にいってしまって、スライディングして相手より早く立ち上がって決めることができました。あのゴールはユースの頃や、去年だったらできていなかったはずです。 自分はもともとゴールよりパスに価値を見いだすタイプで、味方の得点をアシストするほうが好きだったんですが、トップチームに上がってからは結果がものを言うと学びました。ゴールに向かっていくプレーが評価される分、ゴールに対してのアクションを増やしたかった。だからこそユースの頃の自分だったらあのシーンで多分、裏に走ってなかったと思います。でもあの時は、出す側ではなく、受け手になって走ることができ、スライディングでボールを残した面でも、パワフルさで成長も示せたと思います。 世界を見ても中盤で点を取れる選手が本当に増えていますし、改めて結果を残せないと評価してもらえない。インサイドハーフのポジションはなおさらゴールに関わるプレーが大事だなと考えています」 その進化はさらに速度を増していきそうだ。 第3回に続く ■プロフィール 大関友翔 おおぜき・ゆうと/2005年2月6日、神奈川県生まれ。真福寺FC―FC多摩ジュニアーFC多摩Jrユース―川崎U-18―川崎―福島。新時代の司令塔。トップ昇格した川崎ではなかなか出番を掴めなかったが、今季レンタルで加わった福島では中盤の欠かせない存在として活躍を続ける。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
【関連記事】
- 要注目の福島の新司令塔・大関友翔。育った川崎での悔しさ、感謝を胸に恩師・寺田周平監督の下で示すロス五輪世代の輝き【インタビュー1】
- 小林悠との月一の食事、太りにくい体質、食べる遅さ、世代別代表での10番の責任。福島の期待の星・大関友翔の魅力とこれから【インタビュー3】
- 魅力的なサッカーで注目のJ3福島の“新米監督”。川崎一筋だった寺田周平の就任までの笑いあり涙ありの裏話【インタビュー1】
- 理想はフロンターレ流、大木流、サッリ流のブレンド? J3で異彩を放つ寺田周平監督率いる福島の現在地【インタビュー2】
- 「いきなり桃の収穫に(笑)」サッカーの強化から農業部まで還暦を過ぎた“セキさん”こと関塚隆のJ3福島での新たな挑戦【インタビュー1】