テレビカメラマンが命がけで撮影した映像は、クルド人を助ける力にならず
「強烈なショックを受けて、地面に倒れたんだ」 クルド系IMCテレビのカメラマンであるレフィックは、シズレで撮影中に治安部隊によって右足を撃たれた。膝下に激痛が走るが、撮り続けなくては、との思いで、なんとか手元に残っていたカメラを構え直した。 「手を大きく動かすと、また撃たれるかもしれないと思った。だから横たわりながら少しづつカメラを動かした」 撃たれたのは、置き去りにされた遺体や負傷者を運ぶために、白旗をあげて通りに出た市民グループに同行した時だった。救急車で運ばれる直前、同僚の女性記者にカメラを渡した。 病院に着くと、治安部隊の兵士たちに、殴られ、蹴られた。 「お前はテロリストだ!」 記者だと主張してもおかまいなし。トルコ人兵士たちにとっては、クルド人はみなテロリストなのだ。 「殺されるかもしれない……」死を覚悟しながら、無言で屈辱を耐えるしかなかった。 レフィクの映像が放映されると、武器を持たない一般市民を標的にする治安部隊の蛮行が明らかになった。シズレの現実を伝えてくれたと、人々にも感謝された。しかし、政府の攻撃が止むことはなかった。数日後、治安部隊は地下室に火を放ち、市民たちを虐殺したのだ。 命がけで撮影した映像も、同じクルド人たちを助ける力にはならなかった。 (2016年6月撮影)