ギャップ萌えしてしまう自分が悔しい…玉森裕太が体現する”深み”とは?『あのクズを殴ってやりたいんだ』第3話考察レビュー
7年前の事故が海里の道を阻む
ほこ美に誘われて、ボクシングイベントの専属カメラマンを務めることになった海里。そのイベントには、成(渡部篤郎)やゆい(岡崎紗絵)など、海里が所属していた「羽根木ジム」の人たちも参加するため、トラウマを少しでも払拭するためのいい機会に思えた。 しかし、当日、海里はいくら待っても会場に現れない。しびれを切らしたほこ美が探しに行くと、海里は遊び相手の女性とともに、パチンコを楽しんでいた。「やっぱ、(仕事受けるの)やめた」と悪びれもなく言う海里を見て、「クズだとは思っていたけれど、ここまでのクズだとは…」と失望してしまいそうになったのは、わたしだけだろうか。 ほこ美が、「会長もゆいさんも、参加されます」と訴えても、海里は「もう、ボクシングなんて好きじゃないし、もう関わりたくない。余計なお世話ってやつ」と突っぱねる。しかし、「だったら、今のあなたは殴る価値もない!」とほこ美に言われたとき、海里は飄々としながらもすごく傷ついているように見えた。どれだけ「クズ!」と言われても、「知ってる~」と飄々としているのに、“殴る価値もない”と言われるとこんなに落ち込んでしまうのか。 そして、ほこ美が市役所に戻ると、海里は仕事をドタキャンしたのではなく、クビにされたことが明らかになる。その理由も、やはり7年前のあの事故。 試合中の事故とはいえ、陰で人殺しと言われることもあった海里を、役所の専属として雇うのは好ましくないという上の判断があったらしい。7年前の事故にとらわれ、前を向けずにいた海里が、ようやく一歩を踏み出そうとした。それなのに、またその事故が道を阻んでくるなんて。
入り乱れる三角関係
それにしても、7年間、前に進もうとしなかった海里に、一歩踏み出すきっかけを与えたほこ美って、すごすぎやしないだろうか。ボクシングイベントの仕事を引き受けるのだって、とてつもない勇気が必要だったはずだ。 そんなほこ美の存在を受け入れられないのが、7年前の事故のときに、海里のセコンドをしていたゆい(岡崎紗絵)だ。おそらく、彼女は海里に恋心を抱いていたのではないだろうか。 ほこ美が、海里に教わったであろうセコンドの巻き方をしているのを見たとき、明らかに嫉妬心を露わにしていたし、「余計なこと、してほしくなかった」と言いながら、何かとほこ美を“外野”に持っていこうとしているように見える。 ゆいもゆいで、たくさん苦しんできたのだろう。海里とちがって、ボクシングから完全に離れることはしなかったものの、7年前からセコンドを担当できずにいる。それなのに、海里はそんなことも知らず、「ゆいは、強いなぁ」と自分を褒め称える。本当は、そんなに強くないのに。 ゆいが、海里にハグをしているのを見てしまったほこ美は、この先も海里への想いを継続させることができるのだろうか。わたしだったら、身を引こうかな…と思ってしまうかもしれない。 また、ほこ美に好意を持っていそうな同僚・大葉(小関裕太)の存在も気になるところ。三角関係が入り乱れている『あのクズ』。中盤に向けて、さらに盛り上がっていきそうだ。 【著者プロフィール:菜本かな】 メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
菜本かな