板谷由夏が体現した、悲痛な状況の中で光る母性!娘の死をめぐる一家の復讐劇「ブラックファミリア~新堂家の復讐~」
今年の春ドラマ「東京タワー」では永瀬廉と共演で20歳以上年下の青年と恋に堕ちる人妻・浅野詩史役に挑み、その演技が話題となった俳優・板谷由夏。放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」でも藤原道隆(井浦新)の嫡妻・高階貴子を演じ、話題作への出演が続いている。バイプレーヤーとして活躍しながら、ニュース番組のキャスターを長年務め、また、アパレルブランド社長の顔も持つなど多彩な才能を持つ板谷の存在が近年、注目を集めている。 【写真を見る】板谷由夏が主演した「ブラックファミリア~新堂家の復讐~」 そんな板谷が連続ドラマで初主演を果たしたのが、完全オリジナル脚本による「ブラックファミリア~新堂家の復讐~」だ。本作は「ブラックスキャンダル」、「ブラックリベンジ」に続いて読売テレビが制作した、"ブラックシリーズ"の第3弾となる復讐ミステリー。 板谷が演じているのは次女・梨里杏(星乃夢奈)が突然、謎の死を遂げたことで打ちのめされ、やがて復讐を決意する母親の一葉だ。警察に自殺と判断された梨里杏の死の真相を突き止めるため、一丸となる新堂家。父親・航輔役に山中崇、長女・沙奈役に元櫻坂46の渡邉理佐、そして一葉の弟であり、3年前から新堂家に居候している優磨役に森崎ウィンというキャストが顔を揃えている。 ある時は聖母のように、またある時には復讐に燃える魔女のように変貌する板谷の演技に注目してほしい。 ■板谷演じる母親が、愛する娘のために復讐を誓う オーディションで賞を勝ちとり、夢の女優デビューへの道に近付いた梨里杏。そんな彼女を祝う食事会が催されるはずだった日の夜、いつまで待っても姿を現さない梨里杏を探しに家族が高校に行くと、梨里杏が目の前で転落。家族はその無残な姿を目撃してしまう。 娘の死を報じる週刊誌には心ない記事が掲載され、暴露系YouTuberが悪意のある配信をする中、生気を失った一葉は半狂乱になり、航輔も激昂。そんな中、悲しみを隠し、冷静さを保っていたのがジャーナリスト志望の長女・沙奈だ。一葉は週刊誌の編集部に乗り込み、記事を書いた記者と接触することに成功。最初に書いた疑惑の記事が圧力によって掲載できなくなった事実を知ることになる。 娘のお祝いのために持ち帰った、すでに腐っているはずのホールケーキを貪り食う板谷の真に迫った演技は衝撃的だ。やがて、娘の部屋から1枚の写真を発見した一葉は、政財界にも顔が効く"早乙女ホールディングス"一家に的を絞り、家族を集めて復讐を宣言する。 ■悲劇と喜劇が混ざり合う先の読めないストーリー展開 犯人探しに復讐というミステリー要素が満載の中、本作の面白さの1つは、新堂一家が復讐のためにドラマの中で違う人物を演じることにある。一葉は早乙女ホールディングスの創業者・泰造(小野武彦)に近付き、早乙女家に家政婦として入り込むことに成功。また、航輔は社長・秋生(平山祐介)の妻・麗美(筒井真理子)のヘアメイクを担当することに。沙奈は週刊誌の記者の協力を得て、若手議員で早乙女家の長男・倫太郎(塩野瑛久)に取材を依頼し、優磨は梨里杏の友人で早乙女の長女・葵(瀧七海)がK-POPにハマっていることを利用し、パクという偽名を使ってSNSでコンタクトをとる。 危険と隣り合わせの潜入捜査をする中、このままでは新堂家に別の悲劇が起こると危惧する航輔に、それまで気丈に振る舞っていた一葉が「もう1年前には戻れない」と泣きながら心の内をぶつける場面もひときわ切ない。娘を失った怒りと悲しみで復讐の炎に身をやつしながらもなお美しい一葉の"母性"を表現した板谷の熱演に惹きつけられる。 文=山本弘子
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