そば打ちの常識がくつがえるか 十割で粗挽きそばがうまく打てるユニークな研究
FBC福井放送
福井が誇る「越前そば」。小麦粉などのつなぎを使わず、十割で打つには高度な技が必要とされていますが、その常識がくつがえるかもしれません。ユニークな研究を取材しました。 11月8日。福井大学の学生食堂にこの日限定で「新そば」が登場しました。 ■学生 「香りが立っているのと、麺がつるつるしていて めちゃくちゃおいしい」 実はこのそば。大学のある「研究」で試験的に提供されたものです。仕掛けたのは繊維工学が専門の山下義裕特命教授です。 ■福井大学 繊維・マテリアル研究センター山下義裕 特命教授 「セルロースナノファイバーという木材・柑橘類に含まれる食物繊維だが、それをそばに入れることによってそばが食べやすく美味しくなる」 「セルロースナノファイバー」は、ケーキやパンなどの生地をふっくらさせたり、麺のコシを強くしたりするのに使われています。 植物由来の優しい新素材として全国的に活用が進む中、山下教授は福井のソバに着目して、2年をかけて食感の変化などを探ってきました。 研究を進める中で明らかになったのは、そば打ちに革命を起こす新たな可能性です。 ■山下特命教授 「そばの殻も含んだものは粗挽きと言う どうしても十割そばだと伸ばした時に割れてしまう これを使うことによってうまくきれいに伸びて、十割そばでも細く切れる」 ソバの実を殻つきのまま粗めに挽くことで、芳醇な香りと風味が楽しめる「粗挽き」。 粗挽きの十割そばを打つのは至難の業で、そば粉8割に対し2割の小麦粉をつなぎにした、いわゆる「二八」での提供が一般的ですが、粘りを加える働きのあるセルロースをほんの少し加えるだけで、ほぼ十割で粗挽きのそばが打てるというのです。 この新しい素材に興味を示すそば店もあります。 ■山下商店 山下義久 店長 「すごい くっつくね 割れが少ない もっとビリッと、バリバリと割れる時がある 結構良い仕事してるんだと思う このセルロースが」 福井市のショッピングセンターで営業する「山下商店」は、この「セルロースそば」を1日限定で提供しました。 そば粉1キロに対し、つなぎのセルロースはわずか10グラム。限りなく「十割」に近い分量です。 ■セルロースそばを味わって 「良かった おいしかった どういった感じの味なのかとちょっと食べてみたかった 良い食感だし、香りも良かった」 山下教授も2年間の研究の成果を噛みしめました。 「じゅうぶん満足」「良かった」 ■山下特命教授 「何とか福井の人に今までできなかった粗挽きの十割そばを食べてほしいと思っていたけれど、夢が実現した 非常にハッピーな日 新しい一つのそばとして確立できたらと思っている」 そば打ちの常識を覆す注目の新素材セルロース。 粗挽きそばの風味をダイレクトに感じられる十割そばがスタンダードになる日も近いかもしれません。