これまで同様「しっかり5シリーズ」 BMW i5 eドライブ40へ試乗 速く機敏で運転が楽しい
ビッグサルーンのフィーリング
プラットフォームは、フラットなフロアに駆動用バッテリーを敷き詰めたスケートボード構造ではなく、従来的なCLARアーキテクチャの改良版。とはいえ、84kWhのバッテリーはフロア部分に並べられている。 アクスルマウントやブッシュ、サブフレームの補強メンバーなどは専用品。リアに搭載される駆動用モーターの重量を受け止めるべく、エンジン版の5シリーズ・ツーリングと同等の、セルフレベリング機能付きエアスプリングも組まれる。 i5のツーリングも、2024年には登場予定。ステーションワゴンのバッテリーEVはまだ珍しく、人気を集めるのではないだろうか。 実際に英国の市街地を走らせてみると、フィーリングはビッグサルーン。車重が2130kgあり、全長は5060mm、全幅が1900mmもあることを考えれば、まったく不思議ではない。先代の5シリーズよりひと回り大きく、路上でも成長したことを実感する。 だが、オプションのアダプティブサスペンション・プロフェッショナル・パッケージが試乗車には実装され、想像より扱いやすく感じた。これにより、後輪操舵システムとアダプティブダンパーが追加される。 車内空間は、デジタル技術が中心の新しい高級感。マルチカラーのアンビエントライトがダッシュボードを彩り、14.9インチのタッチモニターが中央に据えられ、iドライブ・インフォテインメント・システムが稼働する。 ロータリーコントローラーとショートカットキーで、操作性を高めているものの、インターフェイスは少々複雑。覚えるまでに時間を要する。
従来以上に7シリーズの雰囲気へ近づいた
人間工学的な配置は良好。ボディが大きいだけに、空間には余裕がある。ドライビングポジションはやや高め。フロントシートの下、リアシートの乗員がつま先を潜らせる空間も、若干狭い。駆動用バッテリーの影響だろう。 内装は、i7ほどではないものの、素材は上質で組み立て品質も高い。若干、質感に及ばない部品も散見されるが。 乗り心地は全般的にしなやか。標準のMスポーツ・サスペンションの若干落ち着かないマナーは、アダプティブダンパーが改善させている。 操縦性は、まとまりに優れスマート。後輪駆動らしいシャシーバランスで、鋭く正確に大きなボディを導いていける。シングルモーターでも、動力性能は充分以上。アクセルレスポンスもリニアで鮮明。ツインモーターの必要性を感じさせない。 ブレーキペダルの印象は、漸進的で好ましい。ただし、パドルなどで回生ブレーキの強さを変更できるシステムを、BMWは採用していない。そろそろ導入しても良いのでは。 試乗の限り、航続距離は400kmから450kmの間になる様子。大きなアドバンテージはないが、自宅や出勤先で充電できるなら困ることはないだろう。 新しいi5は、従来以上に7シリーズの雰囲気へ近づいた5シリーズだといえる。価格も、そのぶん上昇したと考えていい。有能で洗練された、完成度の高い電動サルーンだ。予算に余裕がある5シリーズ検討者には、バッテリーEVへ踏み出す好機になるはず。
BMW i5 eドライブ40 Mスポーツ(英国仕様)のスペック
英国価格:7万4105ポンド(約1453万円) 全長:5060mm 全幅:1900mm 全高:1515mm 最高速度:193km/h 0-100km/h加速:6.0秒 航続距離:476-582km 電費:5.0-6.2km/kWh CO2排出量:-g/km 車両重量:2130kg パワートレイン:永久磁石同期モーター 駆動用バッテリー:81.2kWh 最高出力:340ps 最大トルク:43.7kg-m ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) 中嶋健治(翻訳)