徳島県立近代美術館所蔵の「自転車乗り」贋作疑い問題、科学調査へ 担当課長「できるだけ早く」
徳島県立近代美術館が所蔵するフランスの画家ジャン・メッツァンジェ(1883~1956年)の油彩画「自転車乗り」に贋作(がんさく)の疑いが生じている問題で、同館は真贋の確定に向け、作品の科学調査を行う。具体的な調査の方法を検討中で、対応に当たっている竹内利夫課長が徳島新聞の取材に「客観的な証拠を得るために、できるだけ早く実施したい」と述べた。 徳島県立近代美術館の贋作疑い ドイツの有名贋作家「私が描いた」と認める 「自転車乗り」を巡っては、6月に国立西洋美術館(東京)の関係者から寄せられた情報から、ドイツの雁作画家ウォルフガング・ベルトラッキ氏による贋作の疑いが浮上し、7月に同館が発表した。その際に実施するとしていた真贋調査の状況について、竹内課長は「この作品の来歴や、鑑定書が本物かどうかといった調査を実施している。今のところ調査中としか言えない」と話した。 ベルトラッキ氏も同月、徳島新聞などの取材に対し「『自転車乗り』は私が描いた」と主張した。この点も踏まえ、竹内課長は「客観的な証拠が必要」とし、科学調査の必要性を強調。「どういう科学調査をすれば、真贋の判断材料になるデータが得られるのか、科学者と意見交換している」と語った。 科学調査は例えば、絵の具などの成分を分析し、メッツァンジェが画家として活動した年代と矛盾する画材が使われていないか確かめるといった内容が考えられるという。同館と同様、所蔵作品がベルトラッキ氏による贋作の疑いが指摘された高知県立美術館(高知市)は、既にエックス線を使って絵の具の成分などを調べる科学調査を実施している。 「自転車乗り」は、徳島県立近代美術館が1998年度に6720万円で購入した。購入時の県側の責任の有無には「通常の方法で適正に入手した。なんらかの検査を省いたり、確認が足りなかったりしたことはない」と説明。鑑定書の信憑性(しんぴょうせい)にも「当時、メッツァンジェに最も詳しい人の鑑定だった。それを信頼して入手したことは不備ではないと考えている」との認識を示した。 贋作と判明した場合の対応については「法律の専門家に教えてもらいながら研究している」と話した。