知られざる「松本ピアノ」の音色、明治期は「山葉」と並ぶ3大メーカー…君津市役所に歴史的財産として常設
千葉県君津市は、市内に工場があった「松本ピアノ」製のピアノ1台を市役所の市長応接室に常設し、「市の歴史的財産」としてPRを始めた。10月30日にはお披露目を兼ねたミニ演奏会が開かれた。石井宏子市長は「定期的に行って松本ピアノの素晴らしさを広めたい」と話している。(丸山雅樹) 【写真】ヤマハ楽器を駅で体験、指1本でピアノ演奏
「松本ピアノ」は、君津市出身で、米国で製造技術を学んだ松本新吉が1900年代初頭に東京で設立したピアノメーカー。響板に国産エゾマツを用いているのが特徴で、柔らかな音色は「スウィート・トーン」と称された。明治期には「山葉(現・ヤマハ)」などと並び、3大ピアノメーカーと呼ばれた。
関東大震災後に八重原村(現・君津市外箕輪)へ工場を移転し、手作りでの製造を続けたが、職人の減少などで1990年頃に生産が途絶えた。老朽化した工場が2007年に取り壊された際、残されたピアノやオルガンなどが市に寄贈された。
市長応接室に設置されたのは、修復された12台のピアノのうち1台で、1958年頃に製造されたアップライト型。10月30日のお披露目会では2回に分けて演奏が行われ、市内在住のピアニスト鈴木希実さんがドビュッシーの「月の光」など4曲を披露。各回約50人が豊かな音色を楽しんだ。別室には、松本ピアノの歴史などに関するパネルが展示された。
市内の主婦(81)は「とても良い時間を過ごせた。隣り合わせた方との話も弾み、楽しかった」と笑顔で話した。「松本ピアノ・オルガン保存会」の篠宮則子会長は「身近な場所で演奏会を開くことで、1人でも2人でも松本ピアノのファンが増えてくれるといい」と期待する。
保存会では年3回、君津市民文化ホールで「松本ピアノコンサート」を開いている。次回は12月8日午後2時から開催し、前売り券(全席自由)は1000円(当日1200円)。
また、市は、ふるさと納税の体験型返礼品として、同ホールの舞台上で松本ピアノを4時間演奏できる権利を提供することを予定している。寄付額は12月までに決めるという。