3割が12年超え 英国の平均車齢が急上昇、新車価格は15年で129%もアップ
新車への買い換えを躊躇、整備工場は恩恵
英国の乗用車の平均車齢が上昇を続けている。背景には新車価格の高騰があり、新車ディーラーに不利益をもたらす一方で、保険会社や個人経営の整備工場は恩恵を受けている。 【写真】いま新車で買える英国人の「足グルマ」は?【ヴォグゾール・コルサを写真で見る】 (13枚) 英国自動車製造販売者協会(SMMT)の発表によると、今年に入ってからの新車販売台数は全体で6%増加しているものの、法人向けがメインであり個人消費者向けは11.8%減少している。 一方、道路を走る3400万台のうち、1600万台、つまりほぼ2台に1台が登録から10年以上経過したクルマである。そして、そのうち1050万台は12年以上前の登録だ。 コックス・オートモーティブ社のインサイトディレクター、フィリップ・ノタード氏によると、主な要因は新車価格の上昇にあると話す。過去15年間で平均2万2868ポンドから5万2342ポンド(約440万円から1000万円)へと129%上昇しており、同期間のインフレ率をほぼ50%上回るという。 「ディーゼル車の平均価格は2009年と比較して149%上昇し、ガソリン車は93%上昇している」とノタード氏は言う。 「同時に、新車保有台数も劇的に変化している。現在、ディーゼル車は88%も減少し、ガソリン車も63%減少している。EVの成長は当然ながら著しいが、特筆すべきは、現在のEVの平均価格が6万2000ポンド(約1190万円)と高価であることだ。対して、ガソリン車は4万5000ポンド(約860万円)、ディーゼル車は5万8000ポンド(約1110万円)である」 ノタード氏はさらに、「多くの自動車購入者にとって、古いクルマから新しいクルマに乗り換えるための費用や、製品ラインナップの変化(小型車の減少など)が影を落としている」と指摘した。 同じクルマに乗り続ける人が増える中、保険会社は自社の商品やサービスに対する需要の高まりを実感している。 モーターイージー社の最高マーケティング責任者であるジム・マレー・ジョーンズ氏はAUTOCARの取材に応じ、老朽化したクルマの保有台数の増加から恩恵を受けていると語った。 「古いクルマに乗る顧客が保証サービスを求めるケースが増えていることに気付いた。以前は、4~6年落ちのクルマに対する保証が最も需要があったが、現在では8年落ち、さらには10年落ちのクルマに対する需要も出てきている」(同氏) 整備工場も恩恵を受けている。ロビー団体である独立系自動車整備工場協会の広報担当者は、特に古いクルマの所有者が、フランチャイズのディーラーネットワークよりも整備工場での整備を好む傾向にあるため、各社は事業拡大を見込んでいると述べた。 しかし、クルマの高齢化は、すべての人にとって良いニュースというわけではない。ディーラーは下取りの査定を行う際、これまで以上に注意が必要とされている。 「ディーラーの下取り部門は、適正価格で適正なクルマを買い取るか、状態の悪いクルマを高く買い取るか、という瀬戸際に立たされている」と語るのは、ショアハム・ビークル・オークション社の最高経営責任者アレックス・ライト氏だ。 「下取り市場がこれほど二極化しているのは見たことがない。しっかりテストドライブしなれば、ディーラーは高額な修理代を請求されるリスクを負うことになる」 ユーザー視点としては、古いクルマを乗り続ける方が買い替えるよりも安くつくかもしれないが、自動車協会(AA、日本におけるJAFに相当)は整備を怠らないよう注意を促している。 「生活費の危機により、多くの家庭が新車購入を先延ばしにしている。しかし、節約のためにメンテナンスを減らすことが災いして、故障現場へのパトロール隊の出動件数は2022年と比較して50万件以上も増えている。車両メンテナンスの削減は見せかけの節約であり、安全性を損なう可能性がある」(AA広報担当者)
執筆 AUTOCAR JAPAN編集部