「現時点のイメージで作るロゴマークは、既に古い」 会社ロゴマークが果たす役割とは、長野五輪エムブレムのデザイナーに聞く
「会社の顔」の一つにロゴマークがあります。「三菱」や「マクドナルド」「ナイキ」などは誰もが知っているでしょう。どのマークも、会社の理念や哲学、将来像が凝縮され、ずっと変わらないようにみえても実は時代毎に変化し続けています。長野冬季五輪のエムブレムなど、日米で多くのロゴマークを手がけてきたデザイン会社「イデアクレント」(東京都中央区)の篠塚正典代表取締役に、ロゴマークが果たす役割について聞きました。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆一目で分かるデザインの力
―日米で長い間、デザインの仕事をされてきました。思い出深いデザインとしてはどんなものがありますか。 1998年の長野冬季オリンピックで採用されたエンブレムのデザインが一番です。 他では、東芝のノートパソコン「ダイナブック」のロゴマークです。 決定まで時間がかかり、200案以上を提案しました。 難航しましたが、東芝のプロジェクトリーダーと粘り強く話し合い、今のマークがようやく生まれたのです。 それまではシャープなシンボルマークが得意だったのですが、四角いデザインに二つの小さな○がポンポンと並ぶ、女性にも受けそうなマークが出来上がりました。 新境地が開けたプロジェクトでした。 ―ロゴデザインで会社や商品のイメージは大きく変わりますか。 ロゴマークは、同じメッセージをたくさんの人に同時に伝えられます。 言葉や文章で伝えるよりも、デザインは見るだけでメッセージが伝わります。 それだけではありません。デザインはメッセージを受け取った人に「こんなすごいことが実現するんだ」と未来をポジティブに想像させる力もあります。 国境を越え、人種も言葉の壁も越えて、子供からお年寄りまで平等にメッセージを伝えることができます。 それが「デザインの力」だと思っています。
◆会社の20年後をイメージしてデザイン
―会社をイメージできるロゴマークを作るには、会社が目指すべきものを掴む必要がありますね。 重要なのは、会社の理念、フィロソフィー、ビジョンなどを整理して、確認することです。 ブランディングは、単にビジュアルのマークをつくることが目的ではありません。 デザインする時は、社長をはじめ主要な役員の方々にインタビューし、新しい事業にどう取り組むか、過去はどんな事業をしてきたか、現在はどうなっているかを聞き、約20年後を想像して、デザインします。 現時点のイメージをデザインすると明日には古くなってしまいますので。