『仮面ライダーガヴ』アクション監督・藤田 慧「『仮面ライダー』シリーズが50年以上守り続けてきたスーツアクターのいる現場を大切にしたいんです」
――どちらかには偏らない? 藤田 そうですね。特に最近はCGが進化し、しかも仮面ライダーは面をかぶっているので「アクションはすべてCGでいいのでは」と言われることもあります。でもそこには陥らない。 例えば第1話で巨大なコンテナが並ぶ場所で戦うシーンがあるのですが、実際に高いコンテナの上に立ち、塀を蹴るなど激しく動いています。不思議なもので、そうすると画面から演者やスタッフの熱が伝わってくるし、CGも生きてくる。 僕は『仮面ライダー』シリーズが50年以上守り続けてきたスーツアクターのいる現場を大切にしたいんです。CG合成は不可欠だけど、生身のアクションをその歯車にしちゃいけない。令和だからこそ、デジタルだけでなく、生身の良さも大事に、絶妙なバランスを図っているんですよね。 ■ジオラマを作りたいと思ってほしい ――ある記事によれば、藤田監督が『仮面ライダーギーツ』で初めてアクション監督を務めたとき、仮面ライダーを人間の数倍のパワーに設定して演出されたとか。 藤田 仮面ライダーは1年続く番組なので、どうしてもパワーインフレが進むんです。でも最初から強すぎると視聴者に響かない気がするので。 ――では今回も? 藤田 同じ程度に考えています。圧倒的なパワーがあるから、なんとなく勝っちゃった的な展開が好きじゃない。「瞬間移動」や「バリア」などパワーゆえの圧倒的な技も今は極力抑えたいと考えています。 ――少し弱いくらいがいい? 藤田 どちらかといえばそうですね。あるいは弱点やつたなさを出すとか。今回でいえば、ガヴガブレイドという剣がベルトから出てきます。ただそれをカッコよく抜くのではなく、ポロンと落とし、慌てて手に取るんです。 ――あえて、つたなさを出したと。 藤田 そう。カッコいい演出を引き算で削って、むしろぶざまな姿を見せているんですよ。でもだからこそ、必死さや頑張る姿が伝わって、視聴者は一緒にドキドキできるし、うまくいった瞬間はワクワクする。それがいいんです。何かと派手なものが記憶に残りがちですけど、求められているのは、そんな引き算じゃないかと思いますね。