牛も魚も、イモまでぐったり…記録的猛暑が襲う農畜水産業現場 ストレス対策へ生産者はあの手この手の知恵をしぼる
記録的な猛暑が連日続き、鹿児島県内の農水産業の現場では家畜や魚が弱り、作物の生育に影響が出ている。今後も気温の高い状態が継続する見通しで、年々暑さが厳しさを増す中、生産者らは対応に苦慮する。 【写真】色の異なるマルチを張り、暑さ対策の効果を試験しているサツマイモ畑=1日、大崎町
乳牛130頭を飼う西園ミルファーム(南さつま市)では牛舎で送風機10台とミストシャワーを常時稼働させている。西園仁教さん(31)は「7月の電気代は約50万円だった。8月はおそらく80万円ほどに増えると思う」とため息をつく。 乳牛は平熱が高く、第一胃で牧草を消化する際に発酵熱が生じるため暑さに弱い。食欲不振による乳量減少や体調不良となって分娩(ぶんべん)事故が発生する恐れもあり、対策が欠かせない。 血流をよくし、発汗・放熱を促すカプサイシンを配合した餌も与えているが「朝与えた餌が夕方まで残っている。冬は1頭1日35リットル乳を搾れるのが、今は30リットルほど」と肩を落とす。 県内は7月上旬から気温の高い状態が続く。鹿児島市では7月の平均気温が統計開始以来最も高い29.9度を記録、最高気温が35度以上の猛暑日も同月最多の13日に上り、8月に入ってからは毎日だ。 水中にいる養殖魚にも異変が生じている。垂水市漁協によると8月以降、高水温で身が変色し劣化する「身焼け」が例年に比べ増えている。水揚げ量の数%だが、発生した個体はほとんど廃棄せざるを得ない。
カンパチ養殖の楓丸水産(同市)の米田竜一社長(55)も「海水温が30度を超える期間が年々長くなっている」と説明する。8月に入ってからは夜も30度を超え、餌食いが悪く弱って死ぬ魚もいる。抜本的な対策はなく、通常3週間ごとに行う寄生虫対策の薬浴も、魚へのストレスを避けるため、様子を見ながら間隔を空けるよう工夫する。 「効果は分からなくても打てる手は打つ」と話すのは、サツマイモでんぷん製造の福井澱粉(でんぷん)=大崎町=の玉田紀一郎社長(50)。サツマイモは基腐(もとぐされ)病の影響で10アール当たりの収量が激減したが、発生以前から減少傾向にあり、特に毎年5月中旬以降の植え付け分が極端に落ちる傾向があった。 芋の肥大時期に暑さのピークが重なることが要因とみて、今年、契約農家の畑で白色のマルチを張り地温上昇を抑える試験をしている。協力するTOMIOファーム(東串良町)の市園譲二社長(42)は「他の病害虫も発生し、やるべき対策は増えている。今回の試験でいい結果が出て、少しでも希望となれば」と願う。
南日本新聞 | 鹿児島
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