安倍総理は経済重視のプラグマティストか?復古主義者か?政治学者・中野晃一【インタビューPart 2】
※この動画と記事は、以下のインタビュー記事の一部分をピックアップしたダイジェスト版です。 安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】 安倍改造内閣「支持」の背景は? 政治学者・中野晃一教授はどうみる?【フル動画&全文】
安倍晋三首相は3日、内閣改造を実施し、第2次安倍内閣が発足した。メディアは、女性閣僚を5人に増やしたことについて「女性の登用を前面に打ち出した」と大きく報じた。これに対し、政治学者の中野晃一教授は「女性ではあるけれども、極めて保守的であるということが任命の要。そこに触れた新聞は、あまり多くはない」と指摘する。海外のメディアにコメントを求められることも多い中野教授が、「安倍政権に対する海外メディアの見方」について語る。 ――改造を発表した記者会見では、フィナンシャル・タイムズの記者が「入閣した女性の過去の発言や所属している政治団体を見ると、例えば、家族構造、女性と仕事、女性の家庭の中の在るべき存在などについて、かなり保守的な意見を持っている方が多くいる」と質問。安倍総理は「結果を見て判断してほしい」と答えました。 中野:そういう言い方は、昨年の参院選の前であれば、通用したと思うんです。だが、今は違う。安倍さんは、側近などから守られていて、やや現実が見えていない。参院選前までは、「アベノミクス」が内閣の重要課題、安倍さんはプラグマティストだということを海外メディアに向けて盛んに言っていた。それがある程度、信じられていた。しかし、その後の政策の方向はどうだったか。特定秘密保護法の内容と進め方、12月の靖国参拝、今年に入ってからは集団的自衛権とその強権的な進め方。中国、韓国との関係。河野談話の見直し。(こうした流れを見て)安倍さんカラーが出てきたと受け止められている。アベノミクスの成果がそれほど見えていない、息をついてしまったという状況のなかで、当初は「アベノミクス」を歓迎したフィナンシャル・タイムズのようなメディアが、「あなたは、かなり復古主義的な保守思想の持ち主なのではないか」という質問をしたのだと思います。なので、(「結果を見て欲しい」という)開き直ったかのような答えは説得力がなかったと思いますね。 ――安倍総理は、経済重視のプラグマティストか、復古主義的な政治家か。海外メディアは、どう見ている? 中野:当初、政権に返り咲いた2012年の12月の段階では、両論がありました。第1次安倍政権、これまでのさまざまな発言や行動から、一方では、安倍総理は極右政治家だという極端な見方がある。もう一方で、彼はプラグマティストで、例えば第1次安倍政権のときも日中関係を小泉さんが壊したあとに立て直したのは安倍さんだ、現実主義的に行くに違いない、アベノミクスに集中するだろうという意見。両論があったんです。 それがしばらく続いたんですが、やはり昨年夏の参議院選挙をきっかけとして、「ねじれが解消したことで本性を出した」という受け止め方が広がっている。「アベノミクス」は1年ちょっと経過したが、株式市場が一時期、賑わったということ以外はあまり成果がない。消費税増税もあり消費も冷え込んでいる。雇用状況もあまり良くなっていない。賃金も特に低所得者層では上がっていない。いろいろなデータが出てきている。その意味で、ここのところは、安倍さんを見る目は厳しくなっていると思います。 ――具体的に海外メディアとは? 中野:日本に対して一番関心を払っているのは、ある意味当然なんですけど、経済メディアです。フィナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、あるいはロイターとかブルームバーグのような通信社もそう。経済的な理由から日本に対する関心が強い。彼らは、構造改革路線であるとか、規制緩和のようなものは歓迎するけれども、それに反するようなこと、投資家が興味を持つことから気をそらすようなこと、政治的なエネルギーをそぐようなことに安倍さんが夢中になると困ると考えているのでしょう。 そんな彼らにとっては、今年に入ってからの通常国会では、法案はたくさん通ったけれども、改革が進んだというよりは、集団的自衛権が一大議論になっているので、このまま進むのであれば、やはり安倍総理は、復古主義的なアジェンダに興味が強い人だったと、ある程度、評価が定まってしまう可能性があります。