火災で村営船が長期欠航…“海の仲間”は優しかった。業務の合間を縫って物流を代替、燃料運ぶ適合証も取った。「それがシーマンシップだから」 鹿児島・十島村
昨年12月火災が発生した鹿児島県・十島村営船「フェリーとしま2」(1953トン)の欠航で人の移動と物流が滞る中、同業他社からの応援が相次いでいる。代替フェリーのほか、ガソリンなど燃料を運べる特殊な貨物船や異動時期に合わせた高速船の臨時便など、同じ海で働く“仲間”が通常業務の合間を縫って、島民生活を支えている。 【写真】〈関連〉十島村の各島の位置を地図で確認する
「芙蓉海運」(鹿児島市)は、通常業務では必要のない「危険物運送船適合証」を1月に取得した。きっかけは、島民がガソリン不足で困っていると聞いたこと。所有する「ニューなんせい」(499トン)は「デリック」というクレーンのような装置を搭載した国内でも数少ない特殊船で、適合証を取得すればガソリンを運搬できる機能を持つ。 同船は、徳之島の原料糖(分蜜糖)を中心に搭載して関西などへ運ぶ。この時期は繁忙期だが、原田勝弘社長は「デリック船であれば港湾設備に関わらず全ての有人島へ物資を運べる。所有船をやりくりして合間の時間をつくった」と話す。としま2の船員を乗せて航路や各港の特徴を事前に確認、現在は有人7島にガソリンや生活物資を届ける。 としま2は、復旧作業が順調に進めば4月11日に試運転、同12日の運航再開を見込む。現在の代替船は、三島村営船「フェリーみしま」や鹿商海運(同市)の貨物船「ぶーげんびりあ」、伊豆諸島開発(東京都港区)の「あおがしま丸」などのほか、異動時期に対応し、種子屋久高速船(同市)のジェットフォイル「トッピー」が臨時運航している。
肥後正司村長は「生活の全てを船に依存している村。県内のほか、環境の類似する県外の船舶関係者にも協力していただきありがたい」と感謝。鹿児島内航海運組合理事長も兼ねている原田社長は「海では何かあったら助け合う。海洋県の鹿児島では、特にシーマンシップが根付いている」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島
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