日常に溶け込む北欧デザインの魅力をレビュー デンマーク発の新興時計ブランド【アバウト・ヴィンテージ】
腕時計の製造は、その土地に根付いた伝統産業である。つまり、生産国によってデザインや機能が大きく異なる。腕時計大国と言えば「スイス」、「ドイツ」、「フランス」、「アメリカ」、そして「日本」が挙げられるだろう。一方、近年注目されているエリアは“北欧”である。今回は日本市場でトレンドとなっている北欧デザインと、デンマーク発の新興ブランド【アバウト・ヴィンテージ(ABOUT VINTAGE)】の魅力に迫る。
なぜ北欧デザインが日本ウケするのか
アバウト・ヴィンテージ「1815クロノグラフ」 4万6800円 スペック:クオーツ。ステンレススチールケース、レザーストラップ、ドーム型サファイアクリスタル風防(反射防止加工)。直径41mm、厚さ11mm。5気圧防水。 一般的に北欧というのはデンマークやスウェーデン、ノルウェーなどの北ヨーロッパを指す。緯度が高いため、夏は短く冬は長い。真冬になると、午後3時には夜のように暗闇に包まれる。当然、家にいる時間は長くなる。そのような日常でいかに楽しく暮らすか。北欧の人々はシンプルで飽きのこない家具や生活の道具を取り揃え、家の中が温かく快適になるように工夫を凝らしてきた。これが北欧デザインのバックボーンと言える。 必要最低限のミニマルデザインは、長く愛用できる。この美学は日本の伝統工芸やカルチャーにも共通している。かつて日本は、慎ましく質素な暮らしが美であった。無駄を排したことで生まれる上質さ。温かみを求めた優しい色合い。なるほど、IKEAが多くの日本人を魅了しているのも分かる。
デンマークの「アバウト・ヴィンテージ」とは
日本で名が知られているデンマークの腕時計ブランドはいくつかある。【スカーゲン(SKAGEN)】や【ベーリング(BERING)】は、どこかの店舗でお目にかかっているだろう。しかし、今回レビューする「アバウト・ヴィンテージ」は、日本に実店舗が無い。2014年にコペンハーゲンで創設された新興ブランドだ。 同ブランドのコンセプトは「金庫で保管されるほどの価値のある腕時計を良心的な価格で制作する」。洗練された北欧デザインでありながら、価格帯は3万円台からとなっている。商品名は全て4桁の数字。これは時計史における重要な出来事のあった西暦に基づくものである。筆者が手にとったのは「1815」だ。1815年は、世界で初めてストップウオッチ機能搭載のクロノグラフ技術が発明された年だ。アバウト・ヴィンテージはその年を腕時計でどのように表現したのだろうか。