ＣＳ初戦からしっかり戦力を見極めていた巨人・阿部監督(右)

　ついに王者が逆王手をかけた。セ・リーグのCSファイナルステージ第5戦が20日に東京ドームで行われ、巨人がDeNAに1―0で勝利。連勝で対戦成績を3勝3敗（アドバンテージ含む）の五分に戻した。21日の第6戦に勝つか引き分けるかで日本シリーズ進出が決まるが、3連敗の崖っぷちから巻き返せたのは阿部慎之助監督（45）による「非情采配」との見方も強く、称賛の声が上がっている。 【写真】結果が出ず、CS中に宮崎行きとなった秋広優人 　負ければ終わりの一戦を堅守で制した。5回に4年目・中山のソロで均衡を破ると、7回一死三塁のピンチで前進守備を敷いていた遊撃手・門脇は森敬が放った鋭い打球をスライディングキャッチ。1回転してすぐさまホームに投げて補殺。8回無死一塁では途中から三塁守備に就いた増田大が犠打を素早く処理し、併殺を完成させて反撃の芽を摘み取った。 　堅守で1点を守り切った展開に阿部監督は「ずっと1年目から見ているけど、あんな当たり初めて見た」と中山の一発をたたえ、門脇と増田大の好守に「あの2つ（のプレー）で勝ったようなもの。素晴らしかったです」と絶賛した。 　初戦から3連敗を喫し、徳俵に足がかかった状態から土俵中央に戻した。指揮官の手腕について球団関係者は「短期決戦で一番やってはダメなのが、不調の選手を使い続けてズルズル負けること。阿部監督の『ダメならスッパリ切る』という非情采配が実った」と思わずうなった。 　レギュラーシーズンの全試合に二塁で出場し、終盤は不動の3番を務めた吉川は左肋骨を骨折。その穴を埋めるべく、指揮官は試行錯誤を繰り返した。第1戦ではスーパーサブの増田大を「2番・二塁」でスタメン起用。ところが、無安打に終わって試合も0―2で敗れると、2戦目は中山を「3番・二塁」に抜てきした。この選択が増田大に「持ち場」である代走、守備での活躍を呼び、中山に〝プロ1号〟をもたらした。 　さらに外野手の起用でも「トライアンドエラー」を用いた。第1戦に「7番・左翼」で起用したモンテスが無安打に終わると、第2戦は丸、第3戦は長野と「日替わり左翼」で選手の調子を見極めた。 　そして、第4戦からは左手首の骨折から二軍で実戦復帰したヘルナンデスを緊急昇格させた。すると第2戦から一軍に昇格させたばかりの秋広優人内野手（22）が、2度の代打起用で2三振を喫すると、急きょ呼び寄せた宮崎に容赦なく送り返した。この鬼のようにも映る〝信賞必罰〟の措置こそが、大逆転の好循環を生んでいるという。 「阿部監督は結果を出せば起用するし、ダメなら二軍行きを命じる。選手も緊張感を持って試合に臨めている」（球団の古参スタッフ） 　ちなみに、宮崎に送られた秋広はこの日の「みやざきフェニックス・リーグ」阪神戦（アイビー）に「4番・一塁」で出場し、安打を記録している。 　泣いても笑っても21日が最終決戦。阿部監督は「とにかく明日、勝って日本シリーズにみんなで行きたいと思います」と宣言した。就任1年目から大逆転でソフトバンクとの頂上対決に持ち込めるのか――。