久保建英が「優れた選手」から「最高の選手」になるために必要なこと 長年見てきたマジョルカ番スペイン人記者の見解
久保建英はラ・リーガ第7節で、日本代表のチームメイトである浅野拓磨が所属する古巣マジョルカとアウェーのソン・モッシュで対戦し、4シーズンぶりとなる日本人対決が実現した(マジョルカが1-0で勝利)。今回はスペインのラジオ局「カデナ・セル」で、長くマジョルカの番記者を務めるアルベルト・エルナンド氏に、同クラブと日本人選手の関係や、久保の成長、浅野の今季のプレーについて言及してもらった。 【画像】レアル・ソシエダ、マジョルカほか 2024-25シーズン 欧州サッカー注目16クラブのフォーメーション 【マジョルカの日本人選手は浅野拓磨で4人目】 日本人にとって魅力的なカードであるはずのマジョルカ対レアル・ソシエダの一戦は久々の日本人対決となったが、ふたりが出場したのが後半だったため、少し物足りなかったのは事実だろう。 ジャゴバ・アラサテ監督に試合前、「違いを生み出せる選手」と警戒された久保は、サイドでの突破力を武器にリードを許していた試合の流れを変えようと奮闘し、浅野はカウンターで相手の不意を突き、ヴェダド・ムリキにいいボールを供給しようとしていたが、どちらのパフォーマンスも控えめだった。 マジョルカは長らくトップリーグにいながら、財政難で衰退した自らを改革し、泥臭くエリートクラブへ復活してきた。この10年間で"ノンプロ"のサッカークラブ(2017-18シーズンはラ・リーガ管轄外の3部に在籍)から、国王杯決勝(2024年)の舞台にまで上り詰めた。 この旅路のなか、大久保嘉人、家長昭博(川崎フロンターレ)、久保建英に次ぐクラブ史上4人目の日本人選手として今夏、浅野拓磨がソン・モッシュ(マジョルカのホームスタジアム)にやって来た。 今季は久しぶりにラ・リーガ1部でプレーする日本人選手が複数になったわけだが、近年、なぜスペインで日本人が減少しているのだろうか。
【優れた日本人選手獲得は容易ではない】 城彰二が2000年に参戦(バジャドリード)したことが、スペインとアジア市場がつながるきっかけとなった。以降、現在までに14人の日本人選手がラ・リーガ1部でプレーしている。言い換えれば20年以上に渡り、1年半ごとに少なくともひとりの日本人選手が欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)のひとつであるラ・リーガのクラブに所属してきたことになる。 現在ラ・リーガでは選手の獲得に際して、各クラブにサラリーキャップが課されるなど、さまざまな条件がつけられている。それに加え、財政面で制限のないアラブ諸国によって新たな競争が生み出されている。 ラ・リーガのスター選手に対する他国のビッグオファーに、スペインのほとんどのクラブは抗うことができず、選手の流出が現実のものとなった。これは少なからずアジアにも影響を与えている。 現在、欧州5大リーグを含むヨーロッパのトップカテゴリーでプレーする日本人選手は100人ほどいる。三笘薫(ブライトン)や鎌田大地(クリスタル・パレス)などはヨーロッパのサッカー界で実績のある選手であり、もちろんほかのリーグでも成功できるだろう。 しかし近年、ラ・リーガの給与水準はプレミアリーグなどに比べて大きく落ち込んでおり、優れた日本人選手を獲得するのは容易ではない。また、このことが大きく影響し、長年にわたってラ・リーガへの関心と質のレベルを引き上げていたクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)やリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)、ネイマール(アル・ヒラル)、カリム・ベンゼマ(アル・イテハド)などの世界最高峰のスター選手が次々と移籍していった。 スペインを取り巻く環境が厳しい状況にあるなか、マジョルカは久保在籍時の2021年から2025年まで日本企業と契約を結んでいる。株式会社タイカは日本人選手を連れてくる主な原動力となっている。 また、今夏加入した浅野は当初、多くの人々にアジア市場でフォロワーを増やすための単なる新たなマーケティング活動によるものとの見方が強かったが、そのすばらしいパフォーマンスで多くの人々を驚かせている。