【新基準の横断歩道】導入には柔軟な対応を(11月21日)
法令改正により、横断歩道の白線の間隔が45~50センチから2倍の90センチまで広げることが可能になり、福島市に先月、第1号が整備された。県警は今後、導入拡大を検討する方針だが、「白線の位置が把握しにくくなる」といった懸念の声が視覚障害者から上がっている。歩行者の安全確保に向け、県民各層から幅広く意見を聞いた上で柔軟に対応するよう求めたい。 白線間隔の拡張は、7月の道路標識などに関する命令改正で認められた。交通量の多い横断歩道は車のタイヤの摩擦で塗料がすり減りやすく、塗り直しの回数が増える傾向にある。白線の間隔が広がれば、維持管理にかかるコストが削減される利点があるとされる。耐久性が高まり、安全性の確保にもつながる。 変更できるのは音響装置が付いていたり、突起状の「エスコートゾーン」が設置されていたりする横断歩道が対象となる。地域住民、児童生徒、学校関係者、視覚障害者らによる体験会を設け、意見を聞く必要がある。県内約2万カ所の横断歩道のうち、音響装置が設けられているのは397カ所、エスコートゾーンが設置されているのは26カ所にとどまる。新基準の横断歩道導入に際しては、これらの付帯機能も求められる。
視覚障害者は、塗料の凹凸を白杖[はくじょう]や足で感じて横断歩道の位置を認識している。白線の数が減ると、自らが移動している場所を確かめにくくなるとの指摘もある。 県内初の新基準の横断歩道は福島市森合町に設置され、白線の数は当初、8本から5本に減らされた。近くにある県立視覚支援学校などを対象に開いた体験会で児童生徒から、不安の声が寄せられたのも踏まえ、県警は白線の数を1本追加し6本にした。 横断歩道が設けられている場所の周辺環境や交通量は、それぞれ異なる。新基準の導入を検討する際には、体験会での意見や要望に丁寧に耳を傾け、状況に応じて整備方針を決める姿勢が大切だ。 県内の横断歩道で今年に入って起きた横断中の交通事故は10月末現在、122件で前年同期を30件上回る。死者は2人増の3人となっている。新基準の導入が安全運転を一層心がける契機となるよう、ドライバーへの啓発活動にも注力すべきだ。(渡部純)