北海道日本ハムはなぜ今季低迷したのか? 掛布雅之氏が分析
北海道日本ハムの自力CSのチャンスが消滅した。昨年度優勝したチームの今季の低迷には、様々な要因が考えられる。あくまでも外部から野球を見ている評論家のひとつの意見として誤解のないように受け取って欲しいのだが、私は、大谷翔平の二刀流が日本ハムの低迷を引き起こした原因のひとつと考えている。 メディアの露出は、ほとんどが大谷の二刀流の話題だ。外から見ていると彼一人でペナントレースを戦っているように見える。中田は死球骨折で戦線を離脱してしまったが、一時期は彼とアブレイユの2人が、本塁打王、打点王のパのトップ争いを演じていたのに、それがチーム成績に比例しなかった。楽天のジョーンズとマギーのような化学反応が起きなかった。彼らの数字的な奮闘もチームの野球ではなく、個人の野球になってしまっていた。 自己犠牲の野球を美化するわけではないが、選手ひとりひとりが、チームのためにという自己犠牲と、ガマンができなければ勝てない。 古い話で恐縮だが、1979年の阪神も、私が本塁打王を獲得して、故・小林繁さんが最多勝、最高防御率タイトルを獲得したのが、チームが3位だったことがある。監督はブレイザーだったが、これもチーム野球ではなく個人野球になってしまっていたのだ。 では、なぜ日本ハムが、そういうチームに変わってしまったのか。 大谷の二刀流が、チームの戦うリズムを変えてしまったせいではないかと考えざるを得ない。確かに大谷は素晴らしいポテンシャルを持ったルーキーである。投手としては、160キロのストレートを投げ、バッティングでも金属バットを長く使ってきた高校出のルーキー特有の弊害もなく柔らかい。大谷に何の罪もないのだが、彼が二刀流という看板を背負って、ポンと表舞台に出てくれば、それによって押し出された野手や、出番を失った投手のモチベーションはどうだろうか。 大谷は、投手として一軍のマウンドに立つ準備は万全だったのだろうか。クイック、牽制、連携……備えておかねばならないプロのテクニックは山ほどある。プロの世界は、そういう細かい部分に欠陥を見せてしまうと、そこにつけこまれる。ただでさえ高校出のルーキーが、そういうプロ仕様を身につけることは大変なのに、そこで“二刀流”となると技術の習得にかける時間が物理的に少なくなっていく。同じ高校出の注目ルーキーでも阪神の藤浪晋太郎(10勝5敗)が勝てて、「投手・大谷」(3勝0敗)が勝てないのは、その部分の差だろう。そういう状況を見ている他の選手はどう感じるのだろうか。