『無能の鷹』はなぜ視聴者の心を掴んだのか? 菜々緒演じる鷹野の名言に笑って癒やされる
「会社に必要とされてるかは考えない」という鷹野(菜々緒)の名言が響く
鷹野は何も考えていないようで、とんでもないポジティブさを持っており、部長の朱雀(高橋克実)が彼女をクビにしようとしても意に介さず、鶸田から気にならないのかと聞かれると、「私がこの会社を必要としてるから。だから、会社に必要とされてるかは考えないようにしてる」と、ひょうひょうとした態度で答える。周りの評価など一切気にしない鷹野の姿勢に、「メンタルを保つのに役立ちそう」と元気づけられた視聴者が続出した模様。 また、クライアントから失敗することを恐れないかと聞かれると、鷹野は「失敗しても覚えてませんから」と返答。ミスをしようが全然気にしない鷹野のようになれたら、厳しい社会もどうにか渡っていけそうだ。常に予想を超えた名言(迷言!?)が飛び出す、無能極まりないけれど、好きにならずにいられない主人公・鷹野を菜々緒は見事に体現し、視聴者の心を鷲掴みにしている。 鷹野を観察しつつ、さっぱり理解できずにいる鶸田役の塩野も、ここまで体当たりのコメディ演技に挑んでいるのは初めて観たが、気弱な鶸田になり切っていて最高だ。コメディもシリアスもお手の物のベテラン俳優の高橋や、朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)とは全くタイプの違う役で楽しませてくれている鵙尾役の土居志央梨、貴島プロデューサーとは『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)や『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)などでもタッグを組んで視聴者を魅了した井浦の安定感など、根本の脚本の面白さはもちろん、『無能の鷹』はキャストとスタッフの座組がうまくハマったドラマとして、ヒットしているのではないだろうか。 第8話で最終回となるのは残念だが、予告を観ると、鷹野が「仕事ができなくても、みんな生きてるだけでえらいのでは?」と名言を繰り出しているほか、鷹野にヘッドハンティングの話が来たり、彼女が世界を変えたりするらしい驚きの展開など、盛りだくさんの最終回になっているようだ。最後までみんなを癒やしてくれそうな鷹野や、鶸田たちの迎える結末を観るのを楽しみにしつつ、続編が作られることにも期待したい。
清水久美子