「体にいい成分入ってます」とアピールする「健康食品」の、限りなくウソに近いロジック
「ありえない量」を食べたないと、機能性は発揮されない
たとえば、ラットのエサにニガウリ(ゴーヤ)の乾燥粉末を添加して約5週間食べさせたところ、血糖値が約30パーセント低下したという研究がありました。この実験結果から、「ニガウリには血糖値を下げる機能性成分が含まれる」ということはできます。 しかし、この実験でラットが毎日食べたニガウリの量を体重50kgのヒトに換算すると、生のニガウリ9.5kgに相当するのです。ニガウリ1本は200g程度ですから、9.5kgものニガウリはとうてい、毎日食べられる量ではありません。常識的な量のニガウリを食べても、血糖値が下がることはないのです。 また、たとえば「強い骨をつくる」などの機能性の表示が、健康の増進に役立つという考え方そのものにも問題があります。 そもそも「強い骨」は、ある特定の食品成分を食べただけでつくられるものではありません。適切な食生活と適度な身体活動の実践、そして一定量の日光を浴びることなどが欠かせないのです。機能性の表示によって「これを食べるだけで強い骨をつくれる」などの“幻想”を消費者に与え、生活全般に見直しが必要であることを忘れさせてしまうことは問題です。 「体重を減らすのを助ける」といった表示にも、同様のことがいえます。多めの体重を減らすには、何よりもまず、食事量を少し減らして身体活動量を少し増やすことです。それを実践したうえで、そのように機能性を表示する食品を利用するのなら、まだいいでしょう。 でも、多くの人はその食品を摂ることを“免罪符”にしてしまいます。 「これを飲んだからもう少し余計に食べてもいいよね。運動もしなくていいよね」と、自らに甘えを許す理由にしてしまうのです。みなさんのなかにも、思い当たるフシがある方がいらっしゃるのではないでしょうか? * * * さて、食品の機能性に期待してしまう人々の気持ちに応えるかのように、世の中には「健康」を謳う食品が溢れています。ところで、いわゆる「健康食品」と、「機能性表示食品」を含む保険機能食品はどう違うのでしょうか? 両者の違いを整理しつつ、いま問題となっている「機能性表示食品」を中心に、「健康食品」の問題点を探っていきましょう。 ---------- 「健康食品」ウソ・ホント 「効能・効果」の科学的根拠を検証する ----------
高橋 久仁子(群馬大学名誉教授)