円よりスイス・フラン、キャリー取引調達通貨-ステートSとシティ
(ブルームバーグ): キャリートレードの調達通貨として、トレーダーは円の代わりにスイス・フランを選び始めている。
スイス国立銀行(中央銀行)が先月予想外の利下げを実施して以来スイス・フランは急落しており、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズとシティグループは、フランがキャリートレード調達通貨の最有力候補になったとみている。日本銀行が歴史的な利上げに踏み切ったことで円が対フランで上昇することも見込んでいる。
ステート・ストリートの通貨担当シニアポートフォリオマネジャー、アーロン・ハード氏はインタビューで「G10では円が唯一の資金源だったが、政策サイクルが変わり始めた今、フランはより魅力的な資金源になる」とし、「円を唯一の資金源とする投資から、スイス・フランと円のバスケットへのシフトが確かに見られる」と語った。
アクティブ通貨戦略で約100億ドル(約1500億円)を運用するハード氏は、フラン安・円高を予想している。3月21日のスイス中銀のサプライズ利下げ以降、円は対フランで2%以上上昇。円に対するフランのショートは今年最高の取引の一つになっている。
スイス中銀が予想外の利下げ、ECBとFRBに先んじる
キャリートレードの調達通貨にフランを使う動きは、円のストレスを和らげる可能性がある。3月19日の日銀の利上げ以来、円の下落は鈍化しているが、先週は34年ぶりの安値まで下落し多くの人が介入水準とみる1ドル=152円に迫っている。オプショントレーダーも152円か153円が介入の節目になるとみている。
シティは、スイスと日本の金利差が縮小し続けるため、フラン・円相場は現在の167円前後から年末には160円付近まで下落すると予想している。
高島修氏ら通貨ストラテジストはリポートで、これまで円に集中していた資金調達通貨としての下落圧力の一部がフランにシフトし、円に対する全体的な下押し圧力が弱まることに寄与するだろうと分析した。