「麻原彰晃」逮捕から20年 キーワードで見るオウム真理教
その男が隠れていたのは、山梨県旧上九一色村にあったオウム真理教の第6サティアンの「隠し部屋」でした。その男とは、地下鉄サリン事件など数々の凶悪事件を引き起こしたオウム真理教の教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚。1995年5月16日、松本死刑囚は突入した捜査員によって逮捕されました。あれから20年。一連のオウム裁判でも事件の本質は十分に解明されず、多くの課題が残ったまま、いまやオウムという教団をよく知らない若い世代も出てきています。あらためて、オウム真理教とはどのような教団で、社会を揺るがした一連の事件とはどんなものだったのか、キーワードとともに振り返ってみます。 【写真】地下鉄サリン事件から20年 テロ組織へ突き進んだオウム真理教
マインドコントロール、ポア、ホーリーネーム
まずオウム真理教によって広く知られるようになったのが「マインドコントロール」です。事件で逮捕された教団幹部には、世間でエリートと呼ばれる医師や理科系の大学院出身者が数多くいました。マインドコントロールとは、カルト教団が信者の勧誘・管理をするときに用いる洗脳です。人里はなれた施設に隔離して日常生活を奪い、極限状態のなかで教団の教えを24時間徹底的に刷り込むのです。その結果、信者は考える力を失い、入信したエリートたちも教祖・麻原彰晃の思想に染まっていったとされています。 しかし、教団の教えに疑問を持つ信者もいました。このときに脅しとして使われていたのが「ポア」です。ポアとは本来、チベット仏教の言葉で、死の際にその魂を高い世界に転生するという意味です。オウム施設への強制捜査や裁判の過程では、このポアを麻原彰晃が殺人を肯定する意味で使用していたことが発覚。オウムによる最初の殺人事件は、1989年に起きた教団のやり方に疑問を持った男性信者へのリンチ殺人でした。 オウムの出家信者は麻原彰晃から「ホーリーネーム」も与えられていました。ホーリーネームは、仏教経典にある高僧やヒンドゥー教の神々の名を組み合わせたもので、麻原は自らをマハー・グル・アサハラと名乗り、元幹部の井上嘉浩はアーナンダ、石井久子はマハー・ケイマ、上祐史浩はマイトレーヤ、麻原の三女はアーチャリーなどと呼ばれていました。こうしたホーリーネームで呼び合うことによって、閉じた世界での自らの選民意識を高めていったともいわれます。