江崎沖縄北方担当相の発言で注目 「日米地位協定」とは?
地位協定の主な二つの課題
代表的な問題を二つ見ていきましょう。 【基地の返還手続き】 第1に、米軍基地の提供・返還に関する手続き・要件を地位協定は具体的に規定していないことです。基地として使用する場所の範囲や使用期間、条件などが明記されていないのです。そのため、返還を求める場合もどうすればそれが可能か、どういう条件を満たせば可能かはっきりせず、常に政治的な交渉になってしまいます。 この問題についての日本政府・外務省の考えは公表されていません。地位協定は、行政協定で日本が提供した基地をそのまま継続して使用することとしている(2条1(b))ので、あらためて基地の提供について合意する必要はないという考えなのでしょう。その他の具体的な問題は日米双方の実務者から構成される合同委員会で対応策を協議し、合意していくという方針だと思われます。 【米軍人らの裁判権】 第2に、地位協定は米軍・米軍人が日本の法令を順守すべきことを明記しています(第16条)が、実際にはそれが実行されていないことに強い不満があります。いわゆる裁判権の問題です。 公務内と公務外を分ける必要があり、公務内であれば日本の法令は原則として適用されません。 一方、公務外であれば日本の法令が適用されます、たとえば、米軍人が住民に暴行を加えた場合、日本の警察が現行犯逮捕等を行ったときには、それら被疑者の身柄は、米側ではなく、日本側が確保し続けます。 しかし、被疑者は捕まる前に基地内に逃げ込むことがあり、その場合には、公訴が提起されるまで、米側が拘禁を行うこととされています。その間に被疑者が米国へ逃亡することもあります。1995年に沖縄で起こった米軍人による少女暴行事件の場合も控訴提起まで日本側に引き渡しされませんでした。後に日本で裁判にかけられ有罪が確定しましたが、極めて悪質で卑劣な行為であり、引き渡しが実現しないことは現地で大問題となりました。 そのようなことでは住民の安全は確保できないので地位協定の改定を求める声が強くなります。 しかし、政府・外務省は、前述したように、協定の改定でなく、米軍への直接の要望や合同委員会で解決を図ろうとしています。