「男は見た目じゃない!」意外な一面に驚き…藤子F作品「実はハイスペックすぎる」サブキャラたち
■美人な彼女と高学歴を手に入れた秘かな勝ち組…『キテレツ大百科』苅野勉三
“SF”の要素を取り入れた作品も多い藤子・F・不二雄作品だが、なかでも発明好きの少年が繰り広げる奇想天外な活躍を描いた作品といえば、『こどもの光』(家の光協会)で1974年から連載された『キテレツ大百科』だろう。 主人公の小学生、“キテレツ”こと木手英一の作り上げるさまざまな“発明品”が巻き起こす騒動を描いたコメディ作品なのだが、作中、意外なハイスペックぶりを披露したのが、苅野勉三である。 彼は木手家の隣人として登場する浪人生で、キテレツたちからは“勉三さん”の呼称で親しまれている存在だ。見た目は牛乳瓶の底のような丸眼鏡に学生服、東北訛りの喋り方が特徴的な実にユニークなキャラクターである。 作中ではどこか冴えない立ち回りが多い勉三だが、実は彼、上原君子(アニメ版では上原友紀)という美人な彼女がいる。その情けない見た目とは裏腹に、かなり羨ましい背景を持っているのだ。漫画版とアニメ版では経緯は異なるが、最終的に彼女は勉三の誠実な人柄に触れたことが決め手となり、親しい仲へと発展している。 また、アニメ版では最終的に六浪の末に「高尾大学経済学部」に合格し、長きにわたった浪人生活から脱出。六浪こそしたものの、勉三は志望校を見事に勝ち取ってみせた。 どこかひ弱で“ガリ勉”な見た目を裏切る、素晴らしい人間性を見せつけたキャラクターだろう。
■頭が良すぎるのも困りもの? 『エスパー魔美』高畑和夫
『マンガくん』(小学館)にて1976年から連載された『エスパー魔美』にも、ハイスペックなキャラクターが登場する。 本作は平凡な生活を送っていた女子中学生の主人公・佐倉魔美が、突如、内に秘めていた超能力に目覚め、“エスパー”として人助けをおこない活躍していくという、日常とSF要素をミックスしたコメディ作品だ。 そんな本作において、その人柄の良さとスペックの高さで活躍したのが、魔美のボーイフレンド・高畑和夫だ。魔美の協力者としてたびたび姿を現し、彼女からは“高畑さん”の呼称で慕われている。見た目こそ朗らかな雰囲気の普通の男性だが、彼の最大の特徴といえば常人離れした“頭の良さ”だ。 唐突に“後楽園球場の人工芝の総本数”を聞かれ、即答するなんてことは序の口。授業を一回聞くだけでほとんどの内容は理解してしまうため、テストでは難なく満点をたたき出してしまう。 他人から見ればなんとも羨ましい特徴だが、実はこの地頭の良さは高畑にとってコンプレックスにもなっていた。彼はその頭の良さゆえに他者から妬まれることも少なくはないため、わざと100点を取らないよう問題を間違えるなど、常人には理解しがたい独特の苦悩を抱えていたのである。 ちなみに頭脳以外もハイスペックな点が多く、とくに料理をはじめとする家事全般はお手の物。魔美とは違って、生活力にも長けている。持ち前の凄まじい頭脳と柔らかい人間性で魔美をサポートする高畑は、本作になくてはならない魅力的なキャラクターだった。 見た目こそ冴えないものの、実は凄まじい能力や経歴を隠し持っているなど、キャラクターたちの思いがけない二面性には驚かされる。優れた商才、高学歴、卓越した頭脳……常人離れしたハイスペックさの数々は、見ているこちらまで、つい羨ましくなってしまう。 そんなユニークな彼らを生み出した「藤子・F・不二雄」作品。あらためて読み返してみてはいかがだろうか。
創也慎介