阪神ドラ2の小野がキャンプ最終紅白で出した自己最速153キロの可能性
2イニング目となる7回には先頭の今成を追い込んでからのフォークが抜けた。ストレートが速いから、それがうまい具合にチェンジアップのような効果を発揮してスイングアウトとなったが、公式戦では見逃してはくれないだろう。6回の俊介に対する勝負球もフォーク。結果はサードゴロになったが、これも落差のない抜けたフォークだった。梅野に対して1、2球目に“入り球”として投じたスライダーも制球力はいまいち。また梅野を四球で歩かせて、セットポジションからの投球になると、最速は149キロあったが、平均して144キロから146キロと、少し球威が落ちた。 以前、金本監督からけん制時の癖を指摘されたが、そこを意識していたのか、窮屈な感じもした。リズムを乱して大山には続けて四球を与えた。 金本監督は、「コーナー、コーナーを狙いすぎ」と振り返ったが、投手はその投球の半分以上を走者を置いた状況で行うのである。 その点は、クレバーな小野も理解していて、「走者を背負ったときにバランスが悪くなります。修正しないと」と言う。 欲を言えば藤川球児のフォークのようにストレートで追い込んでから、もうひとつ勝負球となる変化球が必要。坂本の目先を変えた107キロのカーブは、配球のアクセントになっていたし、肘の柔軟な使い方からすれば、オープン戦の間に変化球のブラッシュアップに成功する可能性はある。 まともに前に飛ばすことのできないほどの藤川級のストレートを見せられると起用法も膨らむ。 金本監督も、小野が降板すると、「リリーフの2イニングのつもりで全力で行ったのか、先発のうちの6回7回と思って投げたのか」と、その意識を質問したほどだった。 「『普通の先発の2イニングという感じで投げました』と言うんだ。それであんなボールを投げるんだからたいしたもの。コースを狙わずにリリーフで1イニング限定で行ったらどうなるんやろう」 藤川球児の後継者としてのリリーフ起用が金本監督の頭に浮かんだとしても不思議ではない。 9回は無理でも、このストレートさえあれば、7回、もしくは8回の1イニングを力でねじ伏せることができるのかもしれない。だが、まだ実戦では、2イニング以上を投げていないこともあって、「先発起用? 今のところはね。疲れていると思うし、1年目だから大事にいこうと思うけど、早く(先発を)見たいね」と、金本監督は、オープン戦での先発起用方針を明言した。 現在、先発ローテーションは、メッセンジャー、藤浪、岩貞、能見の4人がほぼ確定。第5、第6の先発を昨年ルーキーながら8勝した変則の青柳、日ハムとのオープン戦の開幕戦で結果を出した8年目の“大器”秋山、この日の紅白戦でも、4イニングを無失点に抑えた左腕の横山が争っているが、そこにルーキーの小野が加わってくれば、間違いなくチームの底上げにつながっていく。藤浪とは、球質の違う本格右腕が、ローテーションに入ってくれれば、バリエーションも増える。球団としても先発で大きく育てたいとの方針もあるだろう。 それでも今後チーム事情で「後ろに一枚足りない」となれば、小野のセットアッパーもありえるかもしれない。いずれにしろベンチが起用法に悩むほどの153キロには可能性と期待がたっぷりと詰まっている。