福島第1原発、デブリ初の回収 3グラム以下、データ分析へ
廃炉新たな段階、知見を生かして
【解説】東京電力福島第1原発事故後初めて、溶け落ちた核燃料(デブリ)の採取に成功した。試験的取り出しとはいえ、デブリの分析が進めば、今後予定される本格的な取り出しや、解明の進んでいない原子炉格納容器内部の状況把握につながると期待される。 高線量下で行われるデブリの取り出しは「廃炉の最難関」とされ、今回はその試金石だった。採取までには計画の遅れや作業ミスなどが相次いだが、デブリを採取できたことは一定の前進だ。今後デブリから得られるデータは、有効な取り出し工法の検討などに向けた貴重な知見となるだろう。 ただ、試験的取り出しは、高線量下で行う作業の難しさも浮き彫りにした。限られた時間と空間で行われる作業や放射性物質の飛散防止、そして想定していなかった機器の故障ー。東電は作業の検証や詳細な原因の究明などを進め、今後に生かす必要がある。 また、取り出し着手時に発覚したパイプの接続順のミスは、東電が作業の一部を協力会社任せにしていたことが原因だった。東電は改めて反省し、今後の廃炉作業に向けた教訓にしなければならない。 福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は、試験的取り出しについて「放射性物質を(建屋の)外に出さないようにしながら、遠隔操作のような難しい作業も安全にできる証明になるだろう」と語っていた。失敗と成功の両方を経験した作業は「安全を証明した」とまでは言えない。2051年までの廃炉に向け、東電には今後も訪れるであろう困難を一つ一つ乗り越えることが求められる。(矢島琢也)
福島民友新聞