「あなたには無理だと思う」そう最初は言われたが…ミュージカル俳優・井上芳雄さん「1本に絞った」大学受験
「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれる井上芳雄さんは、最近は舞台だけではなく、ドラマからバラエティーまで活動の幅を広げています。夢を叶えていくための最初の一歩は、東京藝術大学に進んだことが「チャンスをものにするきっかけになった」と振り返ります。華やかな世界は才能が支配するものだと思われがちですが、意外にも「それだけでは夢はかなわない」と言います。井上さんを今の活躍に導いたものは何なのか聞きました。 【写真】小学校時代。劇団四季の「キャッツ」に感動して自分たちでも演じてみた。左側が井上さん
――ミュージカル俳優を目指したきっかけを教えてください。 両親がクリスチャンだったので、おなかの中にいるときから賛美歌を聞いて育ちました。聖歌隊にも入っていて、歌は好きと思うよりも先に、得意という意識があったと思います。 小学5年生のときに劇団四季の「キャッツ」を見て感動し、自分もあの舞台に上がりたい、歌を歌いたいと思ったことがきっかけです。 ――中学2年の時にミュージカルの本場であるアメリカに留学したんですね。 それは父の仕事の都合で、僕は別に行きたくなかったんです。ブロードウェーにも行きましたが、当時はその舞台の本当のすごさもわかっていませんでした。でも刺激はしっかり受けて、「日本に戻ったらすぐにレッスンを始めよう。でないとこの人たちには追いつけない」と強く思いました。 ――帰国して、東京藝術大学へ進学しました。志望校はどのように決めたのですか。 高校を卒業したらすぐ舞台に立ちたかったのですが、親から「大学という場所で4年間を過ごしてみてほしい」と言われました。父が大学教授だったこともあり、好きなことを学べる時間は大切なものだと考えていたのでしょう。それなら、得意な歌を学んで究めたいと思いました。石丸幹二さんなど、劇団四季の憧れの人が多く通っていたことから、東京藝大の声楽科がいいなと思うようになりました。 ――東京藝大は狭き門ですが、不安はありませんでしたか。 だめだろうと思っていたこともありました。当初習っていた声楽の先生からは、「東京藝大は天才が行くところ。あなたには無理だと思う」と言われていました。僕自身も「そうか。まあ、自分は天才とまでは言えないもんな」と思っていました。 ところがその後、東京藝大出身の別の先生に師事したら、「頑張ってみようよ」と言ってくれたのです。ほかの大学と併願するつもりでしたが、「それもやめて一本に絞りましょう」と。そして「自分に教えられることはすべて教えるから」と励ましてくれました。おかげで現役で合格することができました。