朝鮮人労働者らが今も海底に 「長生炭鉱」遺骨発掘、返還を
「その先は国の出番だ」
「もう待てない」 ついに「刻む会」は自ら坑口を開けることを宣言した。クラウドファンディング(※2)で資金を集め(目標額800万円)、10月には重機を投入して坑口付近を掘り起こすという。そのためのスタート集会でもあった。 「遺族の高齢化を考えると、残された時間は限られている。政府が動かないのであれば、まずは自分たちで開口しようと思ったのです。そのうえで政府に遺骨収集を要求していきたい」(「刻む会」井上洋子共同代表) この日、追悼碑の建つ「追悼ひろば」には韓国から来日した遺族や支援者も含め約170人が参加した。集会では韓国遺族会を支援する崔鳳泰弁護士が「政府がやらないのであれば我々がやればいい。82年間、埋もれたままになっている遺骨を遺族のもとに返そう。犠牲者に『ようやく戦争は終わりました』と報告しよう」とあいさつした。 また、遺族に同行した韓国の元副総理・尹徳弘氏は私の取材に対し「国策として炭鉱事業を進め、朝鮮半島から労働者を徴用した日本は、遺骨を掘り出し、遺族に返す義務がある。国として、人としての道理を果たすべきだ。まずは日本の市民が先頭に立ってくれたことには最大限の感謝をしたい」と答えた。 集会後には参加者全員で、坑口があったと思われる場所で草むしりを行なった。10月にはその場所で開口工事が行なわれる。 地域の人々が動いた。日韓両国の市民が動いた。市民は自らの力で坑口を開ける。その先は国の出番だ。国策として炭鉱事業を進めた国は、その責任をしっかりと果たさねばならない。
安田浩一・ジャーナリスト