20-30代女性の命を奪うことも…『コウノドリ』が伝える「子宮頸がん」のこと
20~30代で発症するケースもある子宮頸がん
4月9日は「子宮頸がんを予防する日:子宮の日」だ。 「がん」と聞くと、年齢が高い人がなる病と思っている人も少なくない。しかし、子宮頸がんは、近年は20~30歳代でも発症する女性が増加し、30歳代後半がピークとも言われている(※1)。国立がんセンターの統計データ「子宮頸がん」によると、年間約1万1000人の女性が子宮頸がんと診断され、約3000人が亡くなっている(※2)。また、30歳代までにがんの治療で 子宮全摘をし、妊娠できなくなってしまう人が年間に約1000人いるという報告もある(※3)。妊娠中や子育て中に病気が発覚する事例もあることから子宮頸がんは別名「マザーキラー」とも呼ばれている。 【マンガを読む】妊娠中に子宮頸がん!?『コウノドリ』の名作エピソード限定公開中! そんな子宮頸がんの実態を知ることが出来るのが、漫画家の鈴ノ木ユウさんの名作漫画『コウノドリ』13巻と14巻にわたって掲載された「子宮頸がん」のエピソードだ。子宮頸がんと一口で言っても罹患される方の状況はさまざまだ。しかし、妊娠初期の検査で、子宮頸がんが発覚することもある。このエピソードはそんな夫婦のストーリーと、『コウノドリ』の主人公である産婦人科医・鴻鳥サクラの出生にまつわる出来事も展開される。子宮頸がんを軸に、当事者である女性、夫や家族、医療現場のスタッフ達の苦悩や奮闘が心情含め丁寧に描かれているのだ。
迷っている人、情報を知りたい人の架け橋に
FRaUwebではこれまで、3月4日の「国際HPV啓発デー」や4月9日の「子宮頸がんを予防する日:子宮の日」などに合わせて、過去に7回、鈴ノ木さんのご厚意で「子宮頸がん」のエピソード、全218ページを1週間限定で無料試し読みを掲載してきた。 過去7回の掲載で、多くの方達からたくさんの声をいただいた。 「このマンガを読んで、子宮頸がんを予防しなくちゃと思うようになりました。迷っていたけど娘とHPVワクチン接種について話し合って、打つことに決めました」 「がんと言われてもどこか他人事で自分だけは大丈夫、なるわけないと思っていた。でも、そうじゃなかった。私は妊娠中ではなかったけど、この物語は私にとってもリアル。だから、HPVワクチン接種と検診の大切さをこのマンガで知ってほしい。ワクチン怖いという方の多くは、子宮頸がんの怖さを本当に知っているのでしょうか。私は涙が出るほど知っています」 「彼から薦められて読みました。ちょうどワクチン接種が止まっていた世代で打っていなかったので、このエピソードで打つことを決めました」 と、「自分事」として読んでくださっている読者の方が多かったのだ。 (C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』13巻より また、医療従事者の方達からもSNSなどでたくさんのコメント、リポストなどをいただいた。「治療の現場で同じような経験がある」「子宮頸がんで亡くなった患者さんを想い出し涙が止まらなかった」「子宮頸がんのこと、HPVワクチンのことをこれを機に理解してほしいし、広がってほしい」といった医療現場からの切実な声も数多く寄せられた。 鈴ノ木さんが『コウノドリ』で、この「子宮頸がん」エピソードを書かれ、『モーニング』に掲載されたときは、子宮頸がんのHPVワクチンは、副反応報道から積極的接種を控えていた時期だった。70%近かった接種率が、ほぼ0%まで落ちていた頃だ。長い間、積極的接種が見送られたが、厚生労働省の発表によると、令和4年4月から令和5年3月までの HPV ワクチンの実施状況(※4)は、1回目が42.2%、2回目39.4%、3回目30.2%と少しずつだが盛り返してきている。また、接種控えで打てなかった世代のキャッチアップ接種も、1回目304,737人、2回目248,199人、3回目157,068人と打つ選択をしている人も少なくない。世界に大きく遅れを取ってしまったHPVワクチン接種だが、少しずつ回復の気配が見え始めている。 そして、そんな現状を踏まえて、鈴ノ木さんはこんなコメントを寄せてくれた。 「私がこのエピソードを描いたのは、2016年。当時は、国も積極的接種を控えていた時期でした。子宮頸がんのことを描きながら、私自身も何が正しいのだろうかと素朴な疑問を持っていました。現在はHPVワクチン接種勧奨へと向かい、多くの人たちのHPVワクチンへの印象も変わってきたように感じています。 個人的にそれは素晴らしいことだと思っています。多くの方にHPVワクチンの正しい情報が伝わり、理解され、接種する機会が増えますし、将来的には男子への接種にもつながる。ですが同時に、HPVワクチンが積極的勧奨となった時、ワクチン接種を選択しない人が尊重されず、叩かれるような社会、世の中にはなって欲しくはありません。正しい情報が伝わる中、ワクチン接種を選択する人、しない人がこの先もいるかと思います。その時、お互いがお互いの思いや気持ちを理解し、いたわりのある考えや距離で近い将来、子宮頸がんで苦しむ女性がいなくなる日本へと向かってくれたらと切に願っています」(鈴ノ木さん) 2023年には、9価ワクチン接種もスタートし、さらに、日本でのHPVワクチンの効果のエビデンスもみえてきたという。HPVワクチン接種が定着しているオーストラリアなどの諸国では、いずれ撲滅する病とも言われている子宮頸がん。鈴ノ木先生が言われるように、子宮頸がんで苦しむ女性たちがいなくなる日本に近づくためにも、この漫画を読んで知ることから初めてみてほしい。 【出典】 ※1:子宮頸がん|公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp) ※2:子宮頸がん 患者数(がん統計):[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp) ※3:広報誌「厚生労働」2022年5月号 特集 (mhlw.go.jp) ※4:https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001198130.pdf
鈴ノ木 ユウ/FRaU編集部