5代目スバル レガシィに設定された限定車「2.5GT tS」は、速さよりしなやかさにこだわったモデルだった【10年ひと昔の新車】
2009年5月に6年ぶりにフルモデルチェンジされて登場した5代目スバル レガシィに、2010年6月、限定車「2.5GT tS」が設定された。600台限定のこのSTI製コンプリートカーはどんな個性を発揮していたのか。ここでは登場間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年9月号より) 写真はこちら】 しなやかな動きを持たせたフレキシブルタワーバーを装着。STIが目指す理想は、硬いだけでない、しなやかな走り。(全6枚)
2.5GTをベースにハンドリング主体に運動性能を向上
昨年5月にフルモデルチェンジされた5代目レガシィは、排気量拡大やボディの大型化などによるプレミアム性の向上が好意的に受け入れられ、日本市場ばかりでなく世界的に好調な販売を記録している。また、今年5月には先進運転支援システム「新型アイサイト」を採用したことでも注目を集めている。 今回試乗したのは、その5代目レガシィで初めての設定となるSTIのコンプリートモデル。「tS」とは“tuned by STI”を示す新しいシリーズ名称で、装備仕様をハンドリング主体に磨き上げることに傾注したモデルは、今後この名称に統一されることになった。 つまりこの2.5GT tSは2.5GTをベースに運動性能を向上させ、かつ内外装を特別に仕立てたモデルということになる。すでに十分な性能を持つパワートレーンには手を加えず、「強靱でしなやか」な走りの実現に主眼を置いている。 運動性能向上のヒントは「野生動物の躍動的な走りにありました」とSTI商品企画部大和正明部長は説明する。「野生動物のしなやかな走りの秘密は、強靱な骨格と肉体にあります。そしてけっして足だけが動くわけではなく、全身を使ってしなやかな走りを実現しています。クルマも同じで、硬めるべきところは硬め、いなすべきところはいなす。それによって全身がしなやかに動き、4つのタイヤがしっかりと路面に接地して機能するのです」。 つまり、しっかりとした骨格を作った上で、動くべきところはしなやかに動かすことが重要となるということ。しかし、それはそう簡単なことではない。硬くするよりずっと難しい。しなやかさをどう出すか、動き過ぎてはかえって一体感がなくなる。